院長コラム

Director's column

胸部検診異常

■肺のレントゲンで異常を指摘されたときには?

健康診断などで行う肺のレントゲン検査(胸部レントゲン検査)を受けたのち、「胸部異常陰影」「結節影」「透過性亢進」「陳旧性陰影」などなど、様々な異常を指摘される場合があります。
「要精密検査」などと記載されていると、ドキッとして不安になりますよね。

当院は呼吸器内科を専門の一つとしていますので、多くの患者さんが胸部検診異常の相談に来られます。
今回は胸部レントゲン検査で異常を指摘されたときの精密検査について説明します。

■その異常、本当に異常? まずはレントゲン検査の確認!

レントゲン検査では空気は黒く写り、水分や骨は白く写ります。
肺は空気を多く含んだ臓器ですので全体に黒く写ります。
肺の中に病気があると、病気の部分は空気をあまり含まないため白く写ります。
本来黒く映るべき場所に白い影があると、何かの異常をとらえている可能性があります。これが胸部異常陰影です。

残念ながらレントゲン検査は完全ではありません。
肺の周りには皮膚、筋肉、血管、空気の通り道の気管支のほか、肋骨などたくさんの骨もあります。
レントゲン検査は厚みのある体を1枚の平面写真として写すので、皮膚、骨、血管、皮膚など様々なものが白く写りこむこみます。
これらの影が重なると正常な骨や皮膚、肺の中の血管などの一部が、あたかも肺の中にできた病気のように白くうつって見えることがあります。

検診では病気を早期に見つける、見落としを減らすという目的から、影が強調されるように撮影されます。
医師も気になる所があり、正常か異常か迷うようなものは異常として精密検査に回し、極力見落とさないようにしています。
私自身も呼吸器内科専門医として静岡市内の検診レントゲンの確認を多く行っていますが、肺の中の白い影が病気によるものか、正常の骨や皮膚による影なのか日々悩んでいます。
こういった背景から、異常ありといわれても、精密検査で本当に異常のある方は一部の人です。

当院では、まずはレントゲン写真をもう一度撮影し、本当に異常かどうか確認をします。
可能であれば検診のレントゲンと比較するのも重要です。
異常がないと判断した場合にはそれ以上の検査は行わず、ひきつづき健康診断でレントゲン検査を受けるようお話します。
明らかな異常がある、あるいは再検査をしてもはっきりと正常とはいいづらい場合には、CT検査を行います。

■肺の断面図を撮影する胸部CT検査

胸部CT検査はレントゲンと違い、肺の断面図を撮影することができます。
断面図なので皮膚、筋肉、血管や気管支など、様々な臓器をしっかり区別して確認することができます。
レントゲンで見えた白い影が骨や血管による影なのか、本当の異常なのかを確実に見分けることができます。

■CT検査で本当に異常があった場合は?

異常の原因は非常にさまざまです。
肺炎や結核などの感染症で、急いで治療が必要な場合、あるいは間質性肺炎などのやや特殊な肺の病気で、より細かな検査が必要な場合もあります。

悩ましいのが肺がんです。
見た目から明らかに「肺がん」が強く疑われる場合には、内視鏡を使って白い影の一部を採取し生検します。
採取した検体を顕微鏡で観察しがん組織があるかを調べます。
白い影が小さい場合や、影のかたちが肺がんらしくない場合、少なくとも急いで内視鏡検査を行うほどではないと判断するときには経過をみます。
大体は1~3か月後に再度胸部CT検査を行ない、影が大きくなっている場合には内視鏡などの精密検査へすすみ、逆に影が消えていた場合には経過観察終了です。
影が変わらない場合には6~12ヵ月程度に間隔を伸ばしながら胸部CT検査を繰り返し行い、経過観察を続けます。
2年間で影が全く変化しない場合には悪性の可能性は低いと判断し経過観察を終了します。

■一番大切なことは?

胸部レントゲン検査結果が「要精密検査」と返ってきたらとても不安だと思います。
しかし前述の通り、レントゲン検査で要精密検査となっても、実は異常がない場合も少なくありません。
また異常があったとしても、健康診断や肺がん検診で見つかる異常は病気の初期であることが多く、早期治療に結び付けることができます。
ついつい受診を伸ばし伸ばしにしてしまうこと、これは是非やめてください。

当医院では、初診時に必要であればすぐCT検査を行います。
検査にかかる時間は5分程度です。一般の方にも分かりやすいCTレポート用紙を用いて説明を行います。
「異常あり」とされたら、どきどきして長い期間を過すより、まず検査を受けにいらしてください。

「皆さん、自分で作った不安に踊らされているだけなの。」

美輪明宏

■料金(3割負担の場合)

胸部レントゲン 約1,600円

胸部CT 約4,500円

※医師の判断によって検査が追加になる場合があります。

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