院長コラム

Director's column

春の終わりに咳が続くのはなぜ? 花粉症と喘息の意外なつながり

「風邪はもう治ったはずなのに,なぜか咳だけが続く」

花粉症の時期ころからこのような相談を多くいただきます。春は過ごしやすい季節ですが,呼吸器にとって実は意外と負担のかかる時期でもあります。

花粉,黄砂,寒暖差,連休中の生活リズムの乱れなど,さまざまな要因が重なって,咳や息苦しさが長引くことがあります。さらに5月末~6月になると,今度は日本中がジメジメしてきます。すると家庭内には急激にダニやカビが増えるのです。

喘息は,花粉やかぜなどの感染症,天候や季節の変化,たばこの煙など,いろいろな刺激をきっかけに悪化することが知られています。東京都のアレルギー情報でも,アレルギー性鼻炎を含む上気道の炎症が喘息症状と関連しうることが示されています。

花粉症と咳のつながり

花粉症というと,「くしゃみ」「鼻水」「目のかゆみ」が主体です。ただそれだけの病気ではないのです。実際には,鼻とのど,そして気管支はつながっています。鼻の炎症が強いと,鼻水がのどに落ちる後鼻漏が起こり,のどの違和感や咳の原因になります。さらにもともと気道が敏感な方では,鼻の炎症が引き金となって気管支側の炎症まで悪化し,咳喘息や気管支喘息として症状が目立ってくることがあります。つまり,「鼻の病気」と「胸の病気」は,きれいに別々ではないのです。

気管支にまで敏感さが波及すると、長引く咳や非常につよい咳がでることもあります。夕方から寝るまで,あるいは早朝など咳で眠れない,目が覚めてしまうといった症状で困る方も多いです。特に注意したいのは,「ゼーゼーしていないから喘息ではない」と思い込んでしまうことです。喘息というと,ヒューヒュー,ゼーゼーするイメージが強いのですが,実際には咳だけが前面に出る咳喘息というタイプもあります。運動すると咳き込む,会話を続けると咳が増える,季節の変わり目に毎年悪くなる,こうした特徴があれば,単なる風邪のあとではなく,咳喘息や喘息が隠れている可能性があります。

喘息の治療の本当に大切なこととは?!

喘息で大切なのは,「苦しい時だけ広げる」よりも,「炎症をしっかり抑える」という考え方です。

2026年の世界喘息デーは5月5日で,テーマは「喘息のあるすべての人に抗炎症吸入薬へのアクセスを」です。これは,喘息の治療では気管支を一時的に広げるだけでなく,背景にある慢性的な炎症をきちんと抑えることが大切だという,現在の基本的な考え方を反映しています。

気管支の炎症が十分に抑えられない状態が続くと,気道の壁が厚く硬くなり,元に戻りにくくなる「気道リモデリング」につながることもあります。咳が軽いから大丈夫,そのうち治るだろう,と長く我慢しすぎないことが大切です。 症状でこまったときだけ炎症をおさえる薬を使うというやり方はお勧めできません。症状がないときにも実はくすぶっている炎症をしっかりと抑えて,今の症状だけではなく,将来の肺の機能をまもりましょうという考え方です。

ではどのようなときに受診を考えればよいのでしょうか。目安としては,咳が2〜3週間以上続く,夜間や早朝に咳で目が覚める,息苦しさや胸の違和感がある,ゼーゼーする,春や秋に毎年同じような症状を繰り返す,といった場合です。「花粉症だから」「風邪の名残だから」と自己判断せず,一度相談する価値があります。長引く咳は原因が一つとは限らず,喘息だけでなく,後鼻漏,感染後咳嗽,胃食道逆流などが関係していることもあるため,見極めが大切です。

日常生活では,花粉の多い日の外出後に洗顔やうがいをする,寝具や室内環境を整える,鼻炎を放置しない,たばこの煙を避ける,そして自己判断で吸入治療を中断しないことが重要です。春の咳は「よくあること」と軽く見られがちですが,長引く咳は気道からのサインかもしれません。
「ただの花粉症かな」で終わらせず,気になる症状が続くときは,どうぞ早めにご相談ください。

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大石 敏弘医師
プロフィール

清水第八中学校、清水東高等学校を卒業後、浜松医大医学部に進学。

大学卒業後は、 静岡済生会病院、浜松医療センター、浜松医科大学医学部附属病院、島田市立総合医療センターを経て、再び現在静岡済生会病院にて地域医療に携わる。

糖尿病や甲状腺、高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を専門とし、患者一人ひとりのライフスタイルに合わせた実践的な治療方針を重視している。

現在は当院に非常勤、そして静岡済生会内分泌科として勤務し、日々の診療にあたっている。

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