長引く咳の代表格 咳喘息(咳喘息)について

Q 咳喘息(せきぜんそく)って?

気管支喘息は一般的にも有名な病気だと思います。
ゼイゼイ,ヒューヒューという呼吸音(喘鳴:ぜんめい)と息苦しさをともなうのが気管支喘息ですが,咳喘息では喘鳴が目立たず,咳がながびくことを唯一の症状とする疾患です。
咳喘息ではアレルギー反応などによって,空気の通り道である気管支が敏感になり,気管に対して少しでも刺激がはいると咳が出やすくなってしまっていることが原因と考えられています。
気管支を拡げてあげる気管支拡張薬を吸って咳が減ることを確認するのが診断の手がかりとなります。

Q 咳喘息(せきぜんそく)の症状は?

咳喘息には,咳が悪化するきっかけとなる出来事があります。たとえば会話中など。接客中や会議中,電話にでるときに悪化するという患者さんも多いです。

また咳が強くなる時間帯として,「寝る前」「深夜」「早朝」に最も悪化しやすいことも知られています。夜中にひどい咳寝付けない,いったん寝たあとも目が冷めてしまうというかたもおられます。

そのほか,「季節の変わり目」「寒暖差」なども咳喘息のきっかけとしてよくみられます。思い返すと毎年春先に咳が長引く,寒くなった頃に咳がふえるということはありませんか?いつもはなんとなくやり過ごしているけれど,今回はなかなか治らないと困って来院される方もいます。

また「運動」とくに冬場のマラソンや,「タバコの煙,喫煙」「花粉」「黄砂」などにより咳が悪化する方もいます。これらは気管支の敏感さに刺激をくわえる原因と考えられており,繰り返し起こることが特徴です。一回よくなっても敏感さは残っているので,また次の刺激が加わると繰り返します。そのほかの症状として「のどのつまり感,違和感」を起こすことや,呼吸のしづらさ,胸苦しさが困ると相談にお見えになる方もおられます。

 

Q 咳喘息の診断基準とは?

季節ごとにくりかえしたり,一日の中で症状の変動がある長引く咳で,ゼイゼイがなく,気管支を広げる薬で症状が改善すれば診断可能です。この診断基準で判断すると,中には気管支喘息の症状が安定している方や,軽症の気管支喘息の患者さんも咳喘息に含まれることになります。実際に咳喘息と診断された患者さんのうち,3~4割程度の方が後に気管支喘息の診断につながると言われています。

気管支の敏感さを疑う症状や,血液中の好酸球というアレルギーに関連する細胞数が増えていること,呼気一酸化窒素が上昇していることは,気管支喘息,咳喘息にいずれも共通でみられる所見です。咳喘息の診断を満たす場合でも,もしかしたら気管支喘息の軽症症状をみているかもしれません。今後典型的な気管支喘息へ変化していかないか,慎重に経過を見ていくことが重要です。

 

Q 咳喘息の治療は?

当院に長引く咳がお困りで受診される患者さんの多くは,毎日の症状でこまっていたり,一般的な咳止めやかぜ薬で治らない方です。
当院では初期治療として中高用量の吸入ステロイド(ICS)と長時間作用型β2刺激薬(LABA)の配合剤(ICS/LABA)をよく使用します。

治療がよく効いて,症状が毎日起こらなくなってきたら「軽症」と判断して良いと思います。
吸入ステロイド(ICS)へ減量していきます。症状を抑えられる最少量の薬に減らしていき,最終的には薬を終了できることを目指します。

Q 咳喘息はいつまで治療をしなくてはいけないのでしょうか?

咳喘息の成人患者さんでは,3~4割の方が典型的な気管支喘息にかわっていくと言われています。しかし吸入ステロイドをつかってしっかり治療することで,気管支喘息への移行を防ぐことが報告されています。

咳喘息では吸入ステロイドを使うと症状は改善しますが,残念ながら治療を終了すると,しばしば再燃します。ガイドラインでは,専門施設において,推奨される客観的指標(呼吸機能や気道炎症マーカー)に基づく長期治療をすすめています。また非専門施設では過去1年以上治療を行い,吸入ステロイドが低用量まで減量できて無症状であれば,吸入ステロイドの中止を考慮しても良いとわれています。

当院では今までにどれくらい繰り返しているか,呼吸機能検査の結果,気道の炎症(呼気NO),アトピー素因(アレルギーをどの程度もっていると疑われるのか),採血を行う場合には,血中の好酸球の値,治療後の症状の改善の程度などをみながら,患者さんごとにおすすめする治療期間を考えて提案します。

一旦治療を終了できた場合でも,繰り返す可能性もありえます。症状がぶりかえした場合には,また改めてはやめにご相談ください。

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