診療のご案内
Medical Treatment Guide
各種ワクチン
~■ 肺炎球菌(はいえんきゅうきん)ワクチンについて~
ポイント
①肺炎球菌ワクチンの種類
23価多糖体ワクチン(PPV23:ニューモバックス)と
13価結合型ワクチン(PCV13:プレベナー13)
15価結合型ワクチン(PCV15:バクニュバンス)があります。
②対象者
65歳以上の高齢者には接種がつよく勧められています。
喘息やCOPDなどの呼吸器疾患,糖尿病,心疾患などの基礎疾患を持っている方にも勧められます。
③公費の助成
ニューモバックスの1回目の投与は助成があります。
プレベナー,バクニュバンスは自費での接種となります。
Q. 肺炎ってなんで怖いの?
「肺炎」は肺で炎症がおこり,咳や痰がでたり,高熱がでたりする病気です。
よくみられる病気で,若者であれば数日間抗菌薬を内服することでよくなることも多いですが,高齢者や基礎疾患がある方では,重症化して呼吸状態が悪化したり,ときに人工呼吸器が必要なほどの重篤な呼吸不全に陥ることもあります。
とくに肺炎で死亡する方の90%以上が65歳以上のかたであり,注意しておくべき病気です。
肺炎でなくなる方の97.6%が65歳以上
厚生労働省人口動態統計(確定数)2020年
Q.肺炎球菌(はいえんきゅうきん)って,なんですか?
「肺炎」は肺で炎症がおこり,咳や痰がでたり,高熱がでたりする病気です。
色々な原因で肺炎はおこりますが,中でも細菌による肺炎がもっとも多く,さらに肺炎を起こす細菌の主役がこの「肺炎球菌」といえます。
一般的な肺炎の原因5大菌の中でも,肺炎球菌が最も多い原因です。
日本呼吸器学会成人肺炎診療ガイドラインより
65歳以上の高齢者や,糖尿病,慢性閉塞性肺疾患(COPD),ぜんそく,心疾患,リウマチ・自己免疫疾患・免疫不全の方では,肺炎球菌による肺炎の重症化がしられており,特に注意が必要です。
重症化したばあいには,肺炎球菌が肺だけにとどまらず全身にちらばり,命にかかわる事態になることがあります。
Q.どうやって肺炎球菌にかかってしまうの?
肺炎球菌は鼻やのどの表面にいます。くしゃみや咳をすると,鼻やのどについていた肺炎球菌が飛び散ります。
元気な方であればそれを吸い込んでも感染してしまうことはないとされていますが,ご高齢の方や,もともとなにかの病気で体が弱っている方,あるいはCOPDや喘息,慢性気管支炎など,肺や気管支の病気で肺のバリアがもろくなっていると,肺炎球菌に感染してしまいます。
こういった方では特に重症化が心配です。
Q.特に気をつけなくちゃいけないのは,誰?
医療が進歩した現代でも,肺炎球菌は命に関わる肺炎を起こす場合があります。
私が静岡市の総合病院での勤務時代でも,急激に悪化して呼吸状態がわるくなったり,数日前まで元気にお散歩できていた方が,倒れてしまうような重い肺炎になることを何度も目にしてきました。
とくに当院では喘息やCOPDがある方を心配しています。
海外の疫学研究によると,喘息やCOPDなどの呼吸器疾患があると肺炎球菌性肺炎になる可能性が高いことや,その中でも特に重症な,肺炎球菌が血流にのって全身にちらばる侵襲性肺炎球菌感染症となる可能性も高いことが知られています。
そのため,肺炎球菌感染症にそなえておく必要があります。
そこで活躍するのが,「肺炎球菌ワクチン」です。
Q.肺炎球菌ワクチンの種類について
肺炎球菌ワクチンには大きく分けて2種類あります。
肺炎球菌にはじつに90種類以上のタイプ(血清型)が知られています。
その中でもワクチンは,感染を起こす頻度の多いタイプをカバーしています。
1)ニューモバックス(PPSV23):23種類の肺炎球菌に対してそなえることができるワクチンです。
よく「5年に1回うつ肺炎のワクチン」とおっしゃる患者さんがいます。
正確には,「一度投与すると5年程度はワクチンの効果が高い状態がつづきますが,その後徐々に低下していきますので,もう1回うつことを考えましょう」という言い方がよいかもしれません。
2)プレベナー,バクニュバンス(PCV13, PCV15):13種類,15種類の
肺炎球菌に対して対応するワクチンです。
PCV13はプレベナー13Ⓡとして知られています。
PCV15はバクニュバンスⓇとして,高齢者や免疫不全者などに対して2023年4月から新しく投与ができるようになりました。
Q. ワクチンの安全性が心配ですが,大丈夫?
ニューモバックスは1988年に,プレベナー13は2013年に発売されました。
長い間つかわれてきたワクチンであり,安全性が高いことも証明されています。
おこってくる副反応は,一般的なワクチンと同じで,頭痛や筋肉痛,ふしぶしの痛み,注射した場所が赤く腫れたり,痛かったり,かゆかったりすることがありますが,数日で改善します。
ごくまれに大きく腫れ上がってしまうかたもみられます。その際はご相談ください。
Q.公費で補助がでるって聞いたけど?
ニューモバックスは,成人の任意定期接種の対象となっています。
65歳以上の方は1回目だけですが静岡市から補助が出ます。
自己負担額4820円で接種できます。
ニューモバックスは注射をしてから5年たつと,少しずつ効果が弱まっていくことがわかっています。
より確実に肺炎球菌を予防したい場合や,予防した方がよい方には,ニューモバックスをうってから1年後に,プレベナー13か,あたらしいバクニュバンスを打つことをおすすめします。
2種類のワクチンを打つことで,より強い免疫効果がえられることがわかっているからです。
残念ながら公費の補助がでるのはニューモバックスだけで,プレベナー13とバクニュバンスは自費での接種になります。
Q.バクニュバンスって,今までのワクチンと何が違うの?
2023年4月10日から,新しい肺炎球菌ワクチンである「バクニュバンス」が打てるようになりました。
昔からつかっているプレベナー13のニューバージョンと捉えると分かりやすいです。
プレベナー13は,その名の通り13種類の肺炎球菌に対してそなえるワクチンでしたが,バクニュバンスは15種類に対応します。
バクニュバンスとプレベナー13の効果を比較した報告によると,どちらのワクチンにも含まれている血清型については,バクニュバンスの非劣勢が証明されました。
つまり,バクニュバンスが効果で負けていないよという意味です。
また,バクニュバンスだけに含まれている2つの血清型(22F, 33F)については,当然ながらバクニュバンスの方が優れているという結果が示されています。
副反応も今までしられているとおり,注射した場所の赤みや腫れ,痛みなどであり,バクニュバンスに特別な副反応は報告されていません。
まだ実際に世界で広く使われているわけではないので,今後実際の効果報告がふえてくると思います。
Q.何種類もあるけど,どの順番で打てばいいの?
日本呼吸器学会と日本感染症学会の合同委員会から
「65歳以上の成人に対する肺炎球菌ワクチン接種に関する考え方(第4版)」
が発表されました。
ニューモバックス投与後のバクニュバンスの投与は1年以上あけることが推奨されています。
ニューモバックスの定期接種をまだ済ませていない方については投与時期が少し複雑となりますので、一度医師に相談されることをお勧めします。
静岡市の高齢者用肺炎球菌予防接種はこちら
(https://www.city.shizuoka.lg.jp/000_006615.html)
価格表
- 肺炎球菌(ニューモバックス) 8,800円(税込み)
*公費助成で自己負担金 4,820円となります。
- 肺炎球菌(プレベナー,バクニュバンス) 11,000円(税込)
~インフルエンザワクチン接種をおすすめしています~
・インフルエンザってどんな病気?
インフルエンザは、大変伝染力の強いウイルス性の呼吸器感染症です。
よくみられる症状は、39℃以上の発熱や震え、頭痛などのほか、
痰のあまりでない咳(乾性咳嗽)、筋肉痛や関節痛などが挙げられます。
ヒトからヒトへ簡単にうつり、感染が広がります。
感染している人が咳やくしゃみをすることで、ウイルスがばらまかれます。
インフルエンザウイルスに感染すると、通常では2~4日で症状が急に現れます。
症状が現れてから4日間程度が人にうつす可能性のある時期とされています。
・ワクチン接種が特に必要なのは誰?
抵抗力の弱い人は、インフルエンザで命を落とす可能性があります。
以下のような方(ハイリスクグループ)には、
インフルエンザのワクチン接種を強くお勧めします。
- 65歳以上の高齢者
- 喘息や慢性肺気腫,慢性気管支炎,心機能障害など肺や心臓に慢性疾患のある方
- 感染に対して免疫力の低下している方
- 糖尿病などの代謝異常や腎臓病のために過去1年以上定期的に通院し治療が必要だった方
・ワクチン接種はいつすればよい?
日本でのインフルエンザの流行期は12月下旬から翌年3月初めまでのことが多いです。
ワクチン接種から効果が十分にみられるまでには2週間程度かかりますので、
11月までにワクチン接種を済ませておくのが理想です。
・毎年打たなきゃいけないの?
インフルエンザウイルスは毎年少しずつ性質を変え、毎年異なるタイプのインフルエンザが
流行します。
その年に流行するインフルエンザウイルスのタイプの予想し、
それに対して毎年夏からワクチンが作られます。
その年ごとの予想にあわせた予防接種を毎年行う必要があります。
静岡市では、高齢者インフルエンザ予防接種事業が行われ、助成があります。
詳細は静岡市のHPをご覧ください(https://www.city.shizuoka.lg.jp/388_000089.html)