院長コラム

Director's column

帯状疱疹(たいじょうほうしん)やワクチンについて

帯状疱疹って最近よく話題にあがっていますよね。皆さんの周りでももしかしたら患者さんがいるかもしれません。特にご高齢の方にとっては決して珍しくない病気です。

帯状疱疹は「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」によってひきおこされる病気です。

 

「水痘・帯状疱疹ウイルス」は,幼少期にはじめて感染すると「水ぼうそう」として発症します。生後6か月から4歳頃によくみられる病気です。日本人の多くは幼少期に水ぼうそうにかかっているため,日本では成人の9割以上がこのウイルスをもっています。皆さんや,皆さんのお子さんもきっとかかったことがあるはずです。

水ぼうそうは治ったあとも,じつはウイルスが体の中の神経に隠れて潜み続けているのです。この隠れていた水痘・帯状疱疹ウイルスが,時代を超えて再び活性化することで発症する病気が,「帯状疱疹」なのです。

Q.帯状疱疹って,どんな症状なの?

多くのばあい,はじめに皮膚の違和感や痛みとして始まります。かゆみ,しびれとして感じる程度から,ピリピリ,チクチク,ズキズキ痛む場合もあります。針で刺されたような感じとお話される方もいます。皮膚そのものはきれいなので最初は診断がつけづらいですが,その後時間があいて,赤い発疹(ほっしん)が帯状に現れます。徐々に痛みが強くなり,眠れないほど痛むこともあります。

症状は神経の流れに沿って現れるため,体の左右のどちらかに帯状にみられることが多いです。

主に腕や胸,背中など上半身にみられます。

なかには顔や首など外見上気になるところに現れることもあります。こその後赤い発疹に水ぶくれができ,水ぶくれが破れてただれた状態になり,最終的にかさぶたになって症状がおさまります。この間2~3週間かかります。

帯状疱疹の発疹や水ぶくれは治療をしなくても治る場合がありますが,治療が遅れたり治療しないまま放置すると,頭痛や39℃以上の発熱などの全身症状が現れることもあります。 特に首から上の帯状疱疹では,重症化すると失明や顔面神経麻痺,難聴を引き起こすことがあるため注意が必要です。できる限り早く医療機関を受診し治療を始めることが重要です。

Q.帯状疱疹ってうつるの?

帯状疱疹は,周囲の人に「帯状疱疹」としてうつることはありません。「帯状疱疹」はすでに昔から体内にウイルスが残っている方で,ウイルスがなにかの原因で再活性化しておこる病気だからです。

それでも,ご家族や身近な人に「水痘(すいとう)・帯状疱疹ウイルス」に対する免疫をもっていない人がいる場合,新たに感染する可能性があります。その場合は水ぼうそうとして発症します。小さなお子さんのいるご家庭では注意が必要です。

Q.どういう人が要注意なの?

帯状疱疹は,免疫力が弱ったときに発症することがわかっています。体の免疫力は,加齢や疲労,ストレスなど,誰にでもみられる日常的なことによって低下します。

健康なときや若い人は免疫力が強いため,水痘・帯状疱疹ウイルスは潜んだままおとなしくしています。免疫力が低下してくると,ウイルスが再び活動しはじめ,増殖し,帯状疱疹になると考えられています。

帯状疱疹の発症にはとくに加齢が関係しています。日本人では50代から帯状疱疹の発症率が高くなります。50代,60代,70代と発症率は増加していき,なんと80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれています。

下の表は,水痘帯状疱疹ウイルスにかかった患者さんの総数16784人のうち,再発した患者1076人を年齢・性別ごとに分類したものです。1年あたりの再発患者数は年齢とともに増加し,女性の再発患者の比率が非常に高いことが示されています。

Open Forum Infect Dis. 2017 Winter; 4(1)

発症はすくないですが,20代~40代でも発症する可能性があります。

帯状疱疹発症率は年々増加しています。宮崎県の調査では,例えば60歳以上の年齢層では,1997年から2017年までの21年間で発症率が約1.5倍に増加していることが確認されています。

Q.後遺症が心配って聞いたけど?

通常痛みは水ぶくれや発疹がおさまるとともに軽くなります。しかし皮膚の症状が治まった後にも,長期間にわたって続く痛みに苦しんでいる患者さんが少なくありません。

「帯状疱疹後神経痛(PHN)」といいます。加齢とともにPHNへ移行するリスクは高くなり,50歳以上の患者さんの約2割が移行すると報告されています。

PNHはウイルスが神経を傷つけることで起こるため,帯状疱疹になったらできるだけ早く治療をはじめて,ウイルスを抑えることが大切です。

Q.帯状疱疹ワクチンがあるって聞きました。効果は?

帯状疱疹はワクチンで予防できます。ワクチンには,細菌やウイルスの病原性を弱くしたものや,成分の一部を取り出したもの,ほかには病原性を全くなくしたものなどがあります。ワクチンを接種すると,ワクチンの成分(細菌やウイルス)に対しての免疫力を高めます。その結果病気の発症や重症化を抑えることができます。

帯状疱疹には,50歳以上の方を対象としたワクチンがあります。日本人の多くは幼少期に水ぼうそうにかかったことがあるため,すでに水痘・帯状疱疹ウイルスに対する免疫をもっていますが,残念ながら年齢とともに弱まってしまいます。

ワクチン接種をおこなうことで免疫を強化し,帯状疱疹を予防します。帯状疱疹を完全に防ぐことはできませんが,発症予防効果と,また発症しても症状が軽くすむという報告がされています。

Oxman MN, et al. N Engl J Med. 2005; 352(22)
Strezova A et al. IDWeek 2022, 19-23 October 2022; Washington, DC, USA.

Q.日常生活で注意することは?

免疫力が低下すると潜伏していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再び活性化しやすくなります。日頃から十分な休息をとりながら,免疫力の維持を心がけましょう。免疫力を低下させる疲労やストレスのない規則正しい生活を送ることが大切です。

一般に偏食や運動不足や睡眠不足は免疫力を低下させてしまうといわれています。

食事ではさまざまな栄養素をバランスよく摂り,暴飲暴食を避け,適切な体重管理を心がけましょう。

運動は散歩やウォーキングなどの体温が少し上がる程度の強さのものがおすすめです。日光を浴びたり,ヨガでジットリと汗をかくのもよいでしょう。激しい運動や長時間のトレーニングは披露によって逆に免疫力を下げてしまうことがありますので気を付けましょう。

 

上部へスクロール