院長コラム

Director's column

コロナ後遺症 最新情報

新型コロナに感染した人の中には、最初の症状である発熱やのどの痛み、倦怠感などがひと段落したにもかかわらず、数週間から数ヶ月間に渡って様々な症状が続く方がいます。

海外では「LONG COVID≒ながいコロナ感染症」「Post-acute COVID-19 syndrome≒急性症状がおわったあとのコロナ感染症症候群」など様々な呼び方がされていますが、厚生労働省は「罹患後症状」と呼んでいます。
日本国内では「新型コロナ後遺症」と呼ばれることが多いようです。

■そもそも後遺症って、いつからのどの症状?

米国疾病予防管理センター(CDC)、世界保健機関(WHO)ではこの後遺症に関連して、以下のような提言を行っています。

◆急性COVID-19(いわゆる普通のコロナ感染症における、最初の症状):
何かの症状が出現してから、最大4週間までの諸症状。

◆long COVID-19, 慢性COVID-19(新型コロナ後遺症):
最初4週間で出現した症状から、さらに8週間以上続くさまざまな症状(身体的、精神的)。様々な症状が集中しておこる(症状クラスター)ことで患者の生活の質に影響を及ぼす状況。他の病態では説明が難しい諸症状。

■どんな症状があるの?

新型コロナ後遺症としてみられる症状には、

1)呼吸器に関連した症状:咳、痰、息苦しさ、胸の痛み

2)全身にまつわる症状:倦怠感(だるさ)、関節痛、筋肉痛、しびれ

3)気持ちや心に関連した症状:記憶力や集中力低下、不眠、頭痛、うつ

4)おなかに関連した症状:下痢、腹痛

5)そのほか:脱毛、味覚や嗅覚の異常、動悸や胸の痛み

様々なものが報告されています。もちろんすべてが起こるわけではありません。とくに呼吸器症状や倦怠感は多いようです。

■精神的な症状や気持ちにかかわる症状について

1)COVID-19で入院が必要となった100人を対象としたある研究では、 24%でPTSD(心的外傷後ストレス障害)が発症し、18%で記憶力の問題が出現、16%で集中力の低下がみられたと報告されています。こういった症状はとくに集中治療室(ICU)に入院した患者で多かったようです.
(Halpin SJ, McIvor C, et al. J Med Virol. 2021;93(2):1013. Epub 2020 Aug 17.)

2)他の研究では、COVID-19生存者のほぼ半数で生活の質が落ち、22%で不安やうつ病、また23%で3ヵ月後に精神的な症状が続いていることが明らかになりました。
(Wong AW, Shah AS, Johnston JC, et al. Eur Respir J. 2020;56(5) Epub 2020 Nov 26.)

3)また別の研究では、集中治療室での生存者、つまりより重症であった患者さんにおいては、23%に不安障害、18%にうつ病、7%にPTSDがおこっていたこと報告されています。
(Writing Committee for the COMEBAC Study Group, JAMA. 2021;325(15):1525.)

これらの気持ちや精神的な症状は、インフルエンザなどほかの似ている病気から回復したひとたちよりも、COVID-19でより多く見られる可能性が指摘されています。

4)アメリカの過去の電子カルテの記録と比較した調査では、COVID-19後に新たな精神症状がみられるリスクは、インフルエンザなどの他の医学的疾患から回復した人と比較して高かったと報告されています。
(Taquet M, Luciano S, Geddes JR, et al. Lancet Psychiatry. 2021;8(2):130. Epub 2020 Nov 9.)

■コロナ後遺症の予防方法は?

後遺症を予防する最も効果的な手段は、COVID-19そのものを予防することです。
具体的には、ワクチン接種、マスク着用、適切なソーシャルディスタンス、手指衛生など、すでによく知られていることばかりです。
COVID-19を予防するすべての対策が、後遺症の発生率および重症度を減少させると考えられています。

ワクチン接種を受けた患者ではCOVID-19後遺症の発生率が低いことが報告されています。
1)ワクチンを受けていない人と比べて、ワクチン接種後のSARS-CoV-2感染症を発症した人では、発症1週間目の症状の強さと、28日目以上の持続的症状の両方が少なかったとされています。さらに、ワクチンをうけている人では、無症状である可能性がより高かったそうです。
(Antonelli M, Penfold RS, Merino J, et al. Lancet Infect Dis 2022; 22:43.)

2)イタリアの9つの医療機関から合計2560人の軽症COVID-19患者を対象とした別の大規模観察研究では、ワクチン未接種者と比較して、ワクチン接種者では、後遺症の発生が低下したと報告されています。

ワクチン未接種者では42%、ワクチン1回接種者では30%、ワクチン2回接種者では17%、3回接種者では16%と、ワクチンを多く打つにつれて、後遺症が減ったことも示されています。
(Azzolini E, Levi R, Sarti R, et al. JAMA. 2022 Aug 16;328(7):676-678.)

後遺症については、現時点では特効薬や明確に定まった治療方針はありません。まずはしっかりと予防をすることが、後遺症対策としても重要です。

静岡県では、コロナ後遺症の診療が可能な医療機関を公表しています。お困りの際は受診をご検討ください。(https://www.pref.shizuoka.jp/kousei/ko-420a/kansen/aftereffects/medical_institution.html

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