院長コラム

Director's column

第七波襲来 オミクロンBA4,BA5について

もういい加減コロナには疲れてしまったとう方が多いのではないでしょうか。
マスクはいつまでたってもみんな外さない。
だから自分も外せないし,飲み会は行っていいのか悪いのかわからないまま,人目を気にしながら少人数で行ってみたり。
リモートワークははかどるような気もしてたけど,ずっと家にいるのももうあきた・・・。草ヶ谷医院もちょっと疲れ始めていたのですが,2月~4月にピークがあった第6波が終わり,すこしずつ日常診療がもどってきてほっとしていました。
しかしそれもつかの間で,残念ながら7月に入り明らかにコロナ患者さんが増え始めています。

Q.なんでまた増え始めたの?BA.4,BA.5って,何?

世界における新型コロナの新規感染者数も再増加しており,日本においても過去7日間の症例数の増加率は50%超えるオレンジ色を呈しています。
その大きな要因の一つとしてオミクロン株の亜系統BA.4/BA.5の拡大が挙げられます。

BA.4とBA.5は2022年1~2月にそれぞれ南アフリカで初めてみつかった,オミクロン株の亜系統(兄弟分)です。
世界で最初にBA.4,BA.5が見つかった南アフリカでは,それまで主役だったBA.2を押しのけて増え続け,現在はBA.4とBA.5が大半を占めています。
イギリスやアメリカなどの欧米諸国でも,今まさにBA.4/BA.5が拡大中です。

Q.BA.4,BA.5って,日本ではどんな感じ?

第91回東京都新型コロナウイルス感染症モニタリング会議

6月30日時点での東京都の報告では,BA.5(赤ライン)変異株が25.1%を占めており,海外同様に急激に増えていることがわかります。
第1~6波もまずは東京で流行し,少し遅れて静岡市をふくむ地方都市に広がっていきました。
同様にBA.4/5も本国内でも拡大する可能性が高いといえるでしょう。

Q.BA4,BA5には,ワクチンが効くの?

DOI: 10.1056/NEJMc2206576より

BA.4とBA.5が広がっている理由の一つとして「免疫逃避」が挙げられます。
ワクチンの効果からうまく逃げたり,実際にコロナウイルスに感染した方でも,その際につくられる免疫に対して抵抗する力があるようです。

こちらは,新型コロナワクチンを2回接種した前後の人の血液を用いて,いろいろな変異株を中和する抗体(中和抗体)の量を測定した研究です。
この中和抗体が多ければ,それだけ体をウイルスから守る力が大きいと考えてください。

このグラフによるとBA.4/BA.5に対する中和抗体は,BA.1やBA.2よりも低くなっています。
この結果からは,これまでのオミクロン株よりも, BA.4/BA.5では新型コロナワクチン接種による感染予防効果が低下していることが推測されます。

このグラフはワクチン接種後の抗体価をみていますが,同様にBA.2に感染した患者さんの血液を用いて,同じようにそれぞれの変異株を中和することができる抗体の量を測定した結果も報告されています。
やはりBA.4/BA.5に対する中和抗体の量は十分ではありませんでした。
つまり過去にBA.1やBA.2に感染した人も,BA.4/BA.5に対しては再感染する可能性があるということになります。

Q.BA.4,BA.5って,危ないの?

現在のところ,BA.4/BA.5が,これまでのオミクロン株の他の兄弟分と比較して,重症度が悪化しているという証拠は見つかっていません。
実際に世界で最も早くBA.4/BA.5が流行した南アフリカにおける,人口100万人あたりの死亡者数をしめしたのが下のグラフになります。このグラフをみてみると,BA.1が流行していた1月~2月と比べて,5月~7月までに死亡者数の増加は確認されていません。

これから先,日本でも同様に死亡者数が増加しないのかは現時点では不明ですので,慎重に様子を見ていく必要があります。

新型コロナの流行開始からもう2年以上すぎ,厳格な行動制限が社会・経済・人の心に大きな負の影響を及ぼすことが痛いほどわかりました。
今はまさに行動制限の緩和も進んでいるところです。これからは先も緩和の方向に進んでいくしかないでしょう。
我々はこの2年間,基本的な感染対策方法について嫌になるほど学んできたはずです。また世界でも頭一歩抜けた衛生観念が高い国民性であることもわかりました。
できるだけ社会生活を維持しながら,社会として重症化リスクの高い人をできるだけ守って,感染爆発をさせないよう一人一人が適切に行動することがきっとできるはずです。

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