院長コラム

Director's column

ある日突然,足の指の付け根,甲や踵(かかと)が急に痛むのは痛風かも?
夏場の脱水は要注意。痛風の症状や治療をご説明します。

足が痛む病気はたくさんあるため,しっかり診断するためには,診察と血液検査が必要です。
「尿酸」や「炎症反応」が高ければ,痛風の可能性は高まります。
正しい診断や治療を受けずに放置していると,発作が繰り返し起こり,発作を起こすたびに病態は悪化していきます。
痛風の恐いところは痛みだけではありません。
高い尿酸値を放置すると,さまざまな合併症につながります。
糖尿病や脂質異常症,高血圧を合併しやすいことでも知られています。

これらの生活習慣病は動脈硬化の最大の原因でもあり,この原因がいくつも重なると,命にかかわる「狭心症」や「心筋梗塞」,「脳出血」や「脳梗塞」などの血管疾患を引き起こすことがあります。
適切な治療と生活習慣の見直しが重要です。

痛風はある日突然,足の親指などの関節が赤く腫れて,激痛におそわれる病気です。
患者さんの中にはうまく歩けないほど痛がったり,痛くないほうの片足でけんけんしながら診察室に入って来られる方もおられます。
圧倒的に男性に多く,症状は発作的に起こることため「痛風発作」とよばれます。
いったん発作が起こると,数日間は歩けないほどの痛みが続く場合もあります。
痛みは徐々にやわらいでいきますが,治っても尿酸値が高い状態を放置すれば,発作は繰り返し起こります。

■検診で「尿酸」が高いのをほったらかしていませんか?

痛風のうしろには,「高尿酸血症」という病気が潜んでいます。
体内でつくられる尿酸が増えすぎている状態です。
尿酸は体の新陳代謝で発生する老廃物です。
通常尿酸は体内でつくられる量と,体の外に排出されるバランスが保たれているため,一定の量を維持するようになっています。
しかし尿酸が過剰につくられたり,あるいは排出がうまくいかなくなったりすると,体内に尿酸がたまっていきます。
こうして血液中の尿酸の濃度が7.0mg/dlを超えた状態が高尿酸血症です。

高尿酸血症は血液検査をしなくてはわかりません。
尿酸濃度が高い状態が続くと,血液に溶けきれなかった尿酸は針のように結晶化して,関節にたまっていきます。
関節にたまった尿酸結晶に対して体の免疫細胞が反応し,炎症を起こした結果が「痛風発作」です。

■なんで尿酸が高くなっちゃうの?

生活習慣,とくに食生活が大きく関わっています。
尿酸は「プリン体」が分解されてつくられます。
プリン体は体内で細胞のうまれかわりの際につくられますが,それ以外にも,私たちは毎日の食事からプリン体をとっています。高カロリー食,レバーやエビなどの動物性食品,アルコール飲料などに多く含まれているため,これらの食品の食べすぎはプリン体のとりすぎにつながります。
アルコールは体内でのプリン体をつくりやすくして,さらに尿酸を体の外にだすのを邪魔することがわかっています。

高カロリー食や多量の飲酒は肥満の原因にもなります。
この肥満もまた尿酸が体の外にでることの障害になるため,体内の尿酸は増えていきます。
食事に気を付けて肥満を解消するのが大切です。

■夏場は注意が必要です。大汗かいたあとのビールは・・・危険?

激しい運動や精神的ストレスも尿酸値の上昇につながるといわれています。
これからの季節,とくに激しい運動で大量の汗をかいたときは,体内の尿酸値が一時的に上昇します。 このときに水分を十分に補給しないと,血液中の尿酸濃度が高いままとなり,痛風につながります。
アルコールは尿酸の上昇につながると書いたとおりです。脱水のときに飲むビールはとってもおいしいですが,痛風発作につながります。

■尿酸を下げるには?

1)肥満の解消
肥満気味の方は脂肪や糖分の摂りすぎに注意して,適切な体重に戻すことが重要です。

2)栄養バランスがとれた食事を規則正しく
尿酸値を下げるためにはプリン体を控えめにして,バランスのとれた食事を心がけましょう。きのこや海藻は尿酸を体の外に出す手助けをしてくれます。

3)適度な運動
有酸素運動がおすすめです。激しい動きの無酸素運動は,細胞の生まれ変わりを活発化しプリン体合成につながってしまいます。ウォーキングなどの軽い有酸素運動を定期的に行うのがよいでしょう。

4)ストレスを溜め込まない
ストレス過多は尿酸値に影響を与えます。お気に入りの本を読んだり,映画鑑賞をしたり,音楽を聞くなど,リラックス時間を作りましょう。

■何食べればいいの?何を食べちゃだめなの?

プリン体が多く含まれる食べ物は下記の通りです。

極めて多い(300mg~):鶏レバー,干物(マイワシ),あんこう(肝酒蒸し)など

多い(200~300mg):豚・牛レバー,カツオ,マイワシ,干物(マアジ)など

中程度(100~200mg):肉(豚・牛・鶏)類の多くの部位,魚類など

そのほかジュースなどの甘い飲み物に含まれている果糖は,尿酸値を上げる作用があると言われています。

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