院長コラム

Director's column

コロナ後遺症
長引く咳で困っている方へ

静岡市においても、新型コロナウイルスに感染した後自宅療養期間が過ぎたのに、あるいは入院し無事退院したのに、長引く症状で困っている方がいます。いわゆる「コロナ後遺症」と呼ばれている症状です。
海外では「LONG COVID」や「Post acute COVID」などと呼ばれています。
日本では「後遺症」と呼ばれることが多いようです。

当院がある静岡市清水区においても、8月末~9月にかけて大変多くの方が入院や自宅療養をされていました。
そういった方の中から、治療終了後に病院や保健所から普通の生活にもどって良いと言われたけれども、この咳では外に出られないといった相談が多くあります。

■コロナ後遺症とは?

 新型コロナ後遺症の定義は国内では定まったものはありませんが、海外では「発症から2~4週間経っても続く症状」を後遺症と定義しているものがみられます。

■コロナ後遺症にはどんな症状がある?

様々な国から報告されたコロナ後遺症に関連する論文をもとに、まとめの報告(システマティックレビュー Sci Rep. 2021 Aug 9;11(1):16144. doi: 10.1038/s41598-021-95565-8.)がされています。
なおこの報告で採用された論文はヨーロッパやアメリカからのものが多く、日本は含まれていません。

1)疲労 倦怠感(58%)
2) 頭痛 (44%)
3)注意力障害(27%)
4)脱毛(25%)
5)呼吸困難感(24%)
そのほか咳、胸部不快感、肺機能の低下なども知られています。いくつかの研究では、疲労感は女性におおかったとされています。

■コロナ後遺症の原因は?

新型コロナ後遺症が起こる原因についてはまだ多くが未解明ですが、一の病態ではなく、いくつかの病態が絡み合った病態ではないかと考えられています。
たとえば肺や心臓への障害が残っている方、集中治療を受けた場合には集中治療後症候群、またウイルス後疲労症候群、あるいは持続する新型コロナの症状などの病態が想定されており、これらが様々な程度で絡み合っているとされています。

■コロナ後遺症の呼吸器症状はどんなもの?

コロナ後遺症としてみられる呼吸器症状には、咳、痰、息苦しさ、胸の痛みなどがよく知られています。
下の円グラフは中等症以上で入院を要した患者さん512名の、3か月後の肺炎の治り具合を調べた報告になります。
(厚生労働科学特別研究事業:COVID-19後遺障害に関する実態調査より)
これによると、入院時に肺炎があった方の半数以上に肺炎の影が残っているとされています。この肺炎像は必ずしも臨床症状をともなうわけではありません。
そのため肺炎が残っている=追加治療が必要というわけではありません。

しかし一方で入院時の症状と3か月後の症状の比較を行ったグラフでは、入院時中等症から重症の患者さんの実に10-30%では、咳嗽が残っていると報告されており、こういった患者さんにおいては何らかの治療が必要です。
特効薬はありませんが、呼吸器症状を少しでも穏やかにするため、対症療法を行うことが多いです。

■後遺症はいつまで続くの?

コロナ後遺症の症状は、退院後あるいは自宅療養後、少しずつ時間とともに治っていくと考えられています。
中国の武漢市は世界で一番初めに新型コロナが流行した都市です。その武漢市において新型コロナ感染から治った患者さんを1年後に集めて、症状の調査を行っています。
その報告によると、後遺症の症状がある人の割合は、6ヵ月後68%、12ヵ月後49%と、時間経過とともに減少していることが確認されています。後遺症の症状は、症状の一番強かった急性期において重症度が高かった人ほど長引くようです。

■コロナ後遺症を予防するためには?

後遺症を予防するためには、まずは新型コロナウイルスに感染しないようにするのが最優先です。
静岡市でも緊急事態宣言が解除されましたが、コロナ以前のようにすべて自由に行動してよいというわけではありません。しっかりと感染対策を行いながら、スポーツやレジャー、旅行や飲食を楽しむのが大切です。
当たり前すぎてだんだんあいまいになっている「3密を避けること」は、ワクチン接種後も忘れてはいけません。

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