院長コラム

Director's column

オミクロン株の流行に備えて 静岡市はどうなる? 

■静岡市でも増えていく?

12月22日に大阪府でオミクロン株による市中感染例が見つかってから,京都,東京など大都市では市中感染が報告されています。
静岡市では12月27日に初めてオミクロン株の感染者が市内で確認され,その後1月3日までに静岡県内のオミクロン株感染者は計8人とじわじわと増えてきていますが,まだ市中感染は確認されていません。
海外で報告されているオミクロン株の感染性の高さを考えると,国内や静岡県でも大規模クラスターの発生などにより感染例の急増につながることが心配です。
年末年始の帰省ラッシュや観光地の賑わいなどをみる限り,これから患者数は増加していくものとして考えておく必要があるでしょう。
実際に日本全体における患者数も年末から明らかに増加しています。

■オミクロン株への急激な置き換わり

CDCが発表したゲノム配列データによると,アメリカではオミクロン株が急速に増加しています。
11月27日の週に0.1%だった割合が、3週間後の12月18日の週には73.2%と急激な増加です。
日本においても1月4日現在,過去4週間で最も多く確認されたのはオミクロン株(59%)と報告されています。
これから急速に増えていくと予想させるデータです。

■オミクロン株の重症度について

厚生労働省は日本で確認されたオミクロン株感染例について,積極的疫学調査を行っています。
12月27日時点で情報が得られた109例のオミクロン株感染例の解析では,男性が63%(69/109)、入院からの観察期間中央値は8日で,観察期間中の無症状が29例,軽症が74例,中等症が6例であったと報告されています。ワクチン接種歴に関しては,未接種者が22例,接種者が86例,ワクチン接種日不明が1例でした。

イギリスの健康安全保障庁(UKHSA) はデルタ株とオミクロン株の救急外来受診や入院率の違いを検討しています。(UKHSA Technical Briefing 31)。
2021年11月22日から12月19日のまでのデータによる解析では,救急外来受診・入院率はデルタ株と比較してオミクロン株感染で 0.62倍,入院率のみでは0.38倍とオミクロン株で低いようです。

スコットランドからも類似した結果が報告されています。
オミクロン株感染例において観察された入院数を,デルタ株のデータをもとにした推定入院数で割った比が0.32であったとしています。(Sheikh A et al.

2021年の夏に静岡市でも猛威をふるったデルタ株よりも,オミクロン株は重症化や入院率が低そうなデータであることは非常に喜ばしいですが,重症化しないわけではありません。
感染者数が爆発的に増えてしまえば,それだけ重傷者も増えていきます。

日常生活を取り戻していくことは,人間同士のつながりや社会経済のためにも非常に大切ですが,全国的に問題となった医療機関の逼迫やそれに伴う悲しい事例の頻発が再び起こらないように,今一度「適切に恐れる」姿勢を確認しましょう。

■オミクロンに対して、ワクチンは有効なの?

オミクロン株には,ワクチン接種による免疫から逃げる性質があることが,遺伝子配列や実験・疫学データから示唆されています。実験室のデータや疫学調査では,ワクチン2回接種による発症予防効果が,オミクロン株ではデルタ株と比べて低い可能性があります。

前述のイギリス健康安全保障庁(UKHSA)はオミクロン株およびデルタ株感染による発症に対する,新型コロナワクチン 2 回接種および 3 回(ブースター)接種及び未接種と比較した評価を行っています
(UKHSA. Technical Briefing 31, Andrews et al. UKHSA. Technical Briefing 33)。

2021年11月27日から12月6日に検査確認されたデルタ株感染例 56,439 例,オミクロン株感染例 581 例を,検査陰性者 130,867人と比較して,それぞれのワクチンの有効率を示した表になります。

①ファイザー社ワクチンを 2 回接種したのち 10 週以降では,オミクロン株に対する有効率がデルタ株に比べて低く,時間がたつにつれて効果がさらに下がっていきます。
20 週以降においては、デルタ株に対する有効率が60%強であるのに対し,オミクロン株に対する有効率は極めて低くなっています。

②ブースター(3回目)の発症予防効果については,ファイザー社製ワクチンを用いた場合には,接種直後に発症予防効果が70%に上昇しますが,10 週以降で45%に低下しています。
私も1月中旬に3回目のファイザー社ワクチンを打つ予定ですが,3月末には効果が半減になるとは悲しい限りです。

③一方で3 回目にモデルナ社製ワクチンを用いた場合には,3 回目接種 5~9 週間後でも約 70~75%の有効性が認められており,ファイザーよりも高い有効性が保たれていることが示されています。
静岡市の3回目接種は,ファイザー社とモデルナ社ワクチンが混在します。
1,2回目にファイザー社ワクチンを打った方で,3回目にモデルナ社ワクチンに変更になったとしても,
効果は期待できそうです。

■静岡市の新型コロナワクチン 3回目接種について

2月上旬の3回目のワクチン接種にむけて、静岡市では市の担当部署と各診療機関が協力して態勢づくりを行っています。接種のための手順の詳細については静岡市からのお知らせをご確認ください。

(このコラムは,CDCのデータ、SARS-CoV-2 の変異株 B.1.1.529 系統(オミクロン株)について
(第5報)2021 年 12 月 28 日 9:30 時点12 月 31 日 一部修正 国立感染症研究所 を元に作成しています。)

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