院長コラム

Director's column

第九波襲来 コロナウイルス感染症

静岡市でも最近また発熱患者さんが増えてきました。検査をするとコロナウルス抗原検査陽性者も増えてきています。

まずは第9波といわれる現状を確認してみたいと思います。

Q.今どれくらいの患者さんがでているの?

新型コロナウイルスの感染症法上の位置づけが,2023年5月8日に「5類」に移行したため,新型コロナの感染状況を示すデータは,いままでの「全数把握」から,全国5000の医療機関からの報告をもとに公表する「定点把握」に変わりました。当院も静岡市の定点医療機関です。

図は国立感染症研究所から2023年7月7日(金)に発表された「6月26日(月)から7月2日(日)までの1週間に確認された1医療機関あたりの感染者数の平均値」を元に,NHKで作成されたものを転載したものです。

富山を除く全都道府県で前週に比べて患者数は増えていることがわかります。特に沖縄県での報告者数が突出していることがわかります。沖縄県は過去にも全国的に最も早く感染拡大の波が訪れていましたが,現在すでに全国平均の7〜8倍の新規感染者が出ているようです。

Q.定点把握って,全員人数を数えていた今までとどうやって比べるの?

定点把握はかぎられた病院や診療所での陽性患者数の平均値を出しています。厚生労働省は,今までのデータと定点把握後の感染者数の推移を比較できるようにするため,2022年10月から2023年5月7日までの「第8波」を含む感染状況のデータを,「定点把握」で集計し直し,参考値として発表しています。過去のデータは青色の棒グラフで示されています。黄色の棒グラフが,実際に定点把握に以降したあとの数字です。これをみても,5月下旬から少しずつ患者数が増えていることがわかります。

インフルエンザの場合は10人以上が注意報,30人以上が警報ですので,注意報水準に近づいているといえます。

Q.コロナの流行や受診状況って,今はどんな感じ?

沖縄では医療機関が混雑し,必要な方でも入院できないという事態になっています。5類に移行してから自治体による受診や入院医療機関の調整,あるいはホテル療養などがなくなっています。そのため患者さん一人ひとりが自分で受診する医療機関を探さなくてはなりません。

沖縄ほどのペースではありませんが,静岡県をふくむそれ以外の地域でも,全国的に感染者数は増加しています。その一方であまり患者数の報道がされなくなったので,自分がすんでいる地域での感染状況が分かりにくくなっています。発熱外来をやっている病院やクリニックではひしひしと患者さんが増えていることがわかりますが,「コロナが流行っているなんて知らなかった」という方も少なくありません。

もし感染状況を確認したい場合には,国立感染症研究所が更新する情報や,お住まいの地域の保健所等の報告をご覧ください。

(https://www.niid.go.jp/niid/ja/2019-ncov/2484-idsc/12015-covid19-surveillance-report.html

 

また5類になる前は,「解熱後◯日までは自宅待機してください」のように,陽性の場合は自宅療養するように指示が出ていましたが,現在はこういった指示はありません。外出の制限もなく,陽性の方でも買い物や,ときには体調不良を無理して仕事や旅行などに出かける方もいます。そのため誰でも知らない間に感染者と接触するリスクが高くなっています。

 

そのほか検査をうける方自体も減ってきているかもしれません。5類に移行するまで検査は「無料」でした。そのため体調不良を感じた人は多くの方(ほとんど全員?)が検査をして,コロナに感染しているかどうかを確かめていたと思います。5類になってからは検査も治療も費用がかかるようになったことや,仮にコロナだったとしてもそれを理由にする特別休暇などが無くなった,仕事を休めなくなったなおの理由で,検査を受ける方が減っていると予測されます。「わざわざ調べにいくのも面倒くさい」という方もいるかもしれません。そのため検査をうけて陽性と判明していない患者さんが,実はもっといるのかもしれません。見かけ上感染者数が増えないということも,感染の波がわかりにくくなった要因といえるかもしれません。

Qこれからどうやって注意すればいいの?

5類になって変わったのは政府のうちだす生活様式や支援体制で,ウイルスの性質自体が変わったわけではありません。今までと同じように,ウイルスを持っている人とマスクなしで大きな声で会話をすれば感染もします。真夏でクーラーの効いた密閉空間であればなおさらです。またこれからのコロナが重症化しなくなったわけでもなく,今まで動揺に注意が必要な感染症であることに変わりはありません。

右図は重症化率のおさらいです。「重症」は人工呼吸器での治療が必要になったり,ECMOが必要になったりする状態をいいます。

COVID-19診療の手引 第9版より

30歳代の方と比較すると,40歳代では4倍,50歳代では10倍,60歳代では25倍も重症化のリスクが高いことがわかっています。

中高年以降の方や高齢者とよく接する方は,適度に感染対策を続けていただくことをおすすめします。                 

「若いから重症化しない」「コロナになっても大丈夫」というわけでもありません。

新型コロナウイルスは何度でも感染します。また後遺症がやっかいなことも忘れてはいけません。

新型コロナ後遺症としてみられる症状には,

1)呼吸器に関連した症状:咳,痰,息苦しさ,胸の痛み
2)全身にまつわる症状:倦怠感(だるさ),関節痛,筋肉痛,しびれ
3)気持ちや心に関連した症状:記憶力や集中力低下,不眠,頭痛,うつ
4)おなかに関連した症状:下痢,腹痛
5)そのほか:脱毛,味覚や嗅覚の異常,動悸や胸の痛み

このように様々なものが報告されています。もちろんすべてが起こるわけではありません。それでも1~2ヶ月以上続く咳や息切れの患者さんは,第7波,第8波以降当院のある静岡市でも非常に多くおみえになりました。長引く症状は日常生活にも大きく影響しますので,実は侮れません。

第9波を乗り越えるために

基本的な感染対策は,できる範囲で継続するのが望ましいでしょう。
過度な自粛を続ける必要はありませんが,流行が広がってきたら,日々の手洗い,混雑した屋内では換気や可能ならマスク着用,人混みを避けるといった工夫は,自己防衛や他者への感染のリスクを下げるのに役立ちます。

状況をみながら,適切に注意して日々をすごしていきましょう。

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