院長コラム

Director's column

■ 5月病と春の体調管理

Q.5月病とは?

正式な医学用語としては「5月病」という病気はありません。5月の連休前後になんとなく体調がわるくなったり,気分が落ち込んだり,あるいは仕事や学校に行きたくないといった気分に見舞われる症状のことを5月病と呼ぶことが多いです。

医療機関に受診すると,「軽度のうつ」や「適応障害」といった病名をつけられることもあります。

昔は新社会人や,4月から中学や高校に入学した学生に多く見られていましたが,現在は転勤や転職などにともなって新しい環境に慣れない中高年の方でも増加しています。

Q.症状ってどんなもの?

定まった症状があるわけではありませんが,一般的に疲れやすい,頭が重くなる,しっかり眠れた感じがしない,仕事や家事が今一つはかどらないといったものから,なんとなく元気がない,やる気がしない,興味がわかない,漠然とした不安な感じなど,精神的なものまでさまざまです。

これらの症状はうつ病と鑑別がむずかしいこともあるため,思い当たる症状が長引いてつらい場合には,早めに心療内科や精神科を受診することをおすすめします。

Q.原因は?

五月病は主にストレスが原因で起こるとされています。4月~5月にかけては,進学や就職,あるいは引っ越しなどで新しい環境に変わる人が多いです。そのため特にストレスがたまりやすい時期といえます。

Qどんなヒトがなりやすいの?

五月病は誰でもかかる可能性があります。とくに5月病になりやすい方の正確としては,下記のようなことが言われています。

■ 義務感が強い

■ 仕事や勉強に熱心

■ 完璧を目指してしまう

■ 几帳面で真面目

■ 凝り性

■ 他者へ配慮しすぎる傾向

 

さらにこのような性格を背景に,受験や就職など人生の節目とも言える大きな目標を達成した時期で,ちょうど燃え尽き症候群のような状態に陥っている人や,前述のとおり日常生活における環境が大きく変わったことなどがきっかけになるため注意が必要です。

一人ですべてを抱え込んで疲れてしまわないように,あまり気負いすぎずに,家族や友人,周りの人に協力を求めるようにしましょう。

Q.春の体調管理のポイント

自律神経を整えるため、次のことに気を付けてみましょう。

1)生活習慣の管理

決まった時間に起床しましょう。休日もできるだけ決まった時間に起床して,起きた後はカーテンを開けて日光を浴びるのがおすすめです。1日は24時間ですが,ヒトの体内時計は24時間より少しだけ長いと言われています。そのため,毎日少しずつ体内時計はズレていってしまいます。これが続くといわゆる時差ボケのような状態になってしまいます。これは体調不良や集中力の低下,睡眠の質の低下に繋がる場合があります。朝起きて,日光を浴びることで体内時計をリセットしましょう。またパソコンやスマホ,テレビの光によっても体内リズムが崩れることがあります。

深夜まで仕事を頑張りすぎたり,寝る前にスマホやタブレットを見すぎてしまうのは,夜の睡眠の障害につながりおすすめできません。

 

2)食事の注意点

朝食を食べることも生活リズムを整えるのに大切です。とくに自立神経を整える作用のあるビタミン・カルシウム・ミネラルを摂るよう意識してみましょう。

■ ビタミンC…みかんやいちごなど,野菜,いも類 

■ ビタミンA…緑黄色野菜(人参など),卵,レバー

■ ビタミンE…ナッツ類,魚介類,アボカド

■ カルシウム…乳製品,豆腐など

 

3)ストレスの解消法

  • 意識的に動く

同じ姿勢で長く作業をすると,体に疲れがたまるだけでなく,集中力もおちてかえって仕事がはかどりません。仕事の合間に意識してトイレに行ってみたり,軽くストレッチをしてみたりするのがお勧めです。座ったままできるストレッチでも体も心もほぐれます。

  • 深呼吸してみる

ヒトは集中すると,無意識のうちに肩に力がはいり,呼吸が浅くなっている場合があります。ちょっと一息ついたときに,背筋を伸ばして深呼吸する習慣をつけてみましょう。ふかく息をすって,それをゆっくりと吐き出すだけでも,リラックス効果が期待できます。

 

  • カフェインレスの飲み物を飲む

コーヒーや紅茶にはカフェインが多く含まれている場合があります。これらは脳を活性化させて集中力を上げるのには効果的ですが,その副作用で脳を興奮させてしまい,ストレスや不眠の原因になってしまうこともあります。イライラにつながる場合もあるため,カフェインは適量の摂取を心掛け,夕方以降は摂取をさけるのがお勧めです。

 

  • 休息をとる

自宅やプライベートな時間にストレスを解消するためには,心や体を休める時間をきちんと確保することが大切です。特に春はあまり予定や目標などを作りすぎず,リラックスした状態で休日を過ごせるようにすることをおすすめします。特に目的のないフラッとした散歩なども,気候がよい今の時期には気分転換によいでしょう。

 

4)睡眠も大切

ストレスを解消し体調を管理するためには,毎日の休養時間に加えて,睡眠時間がしっかりと確保できているかどうかがとても重要です。特に睡眠時間は毎日6時間以上であることが理想的とされています。ちなみにAmazonのCEOであるジェフ・ベゾス氏は夜10時に就寝し,朝5時に起床する7時間睡眠をとっているそうです。世界的な経営者である彼は,意識して7時間睡眠をとることが,翌日の生産性に大きく寄与するとコメントしています。

  • 夜にゆっくりと休むことができなかった場合には

パワーナップ(戦略的昼寝)がおすすめです。NASA(アメリカ航空宇宙局)の睡眠研究によると,昼に26分間の仮眠をすることで,認知能力が34%,注意力が54%も向上したとされています。
誰でも昼下がりに眠気に襲われてウトウトした経験があると思います。
この原因として生体リズムがあげられます。ヒトは夜中の午前2〜4時頃,お昼の午後2〜4時頃に眠気のピークが訪れるように体内時計が設定されています。
すなわち昼食後に眠気が訪れるのはいわばとても自然なことなのです。

そんな時間帯に無理に仕事を続けても効率や成果は落ちる一方です。そこで昼間に一時的に睡眠をとり眠気を解消することは,生理学的にも理にかなっているのです。
昼食後など15分~20分程度意識的に昼寝をしてみてください。ちなみに私も14時~14時20分くらいに,無理やり目を閉じて休むようにしています。
案外スルッと眠りにおちることができます。20分後にアラームが鳴るとパッと目が覚めて午後の外来に臨むことができ,朝と同じ高すぎるテンションで外来を続けることができるわけです。
30分以上寝てしまうと脳は本格的な睡眠ステージに入ろうとするため,なかなか目が覚めない,起きてもボーっとしてしまうといった問題が生じます。これでは戦略的昼寝ではなくただの惰眠になってしまいます。どうぞご注意を。

Q. 体調管理のための運動方法

運動をするとセロトニンという神経伝達物質が分泌されます。セロトニンは自律神経のバランスを調節する働きを活性化させる効果が知られています。

軽いウォーキングや,ゆっくり目のジョギング,あるいは水泳などの有酸素運動などは非常に効果的です。最初から頑張りすぎてはいけません。日常生活では階段を使ってみる,最寄りのバス停より一つ前で降りてみるなど,日々の生活の中で運動を増やす工夫をしてみましょう。
余談ですが,草ヶ谷医院院長は週に1回ジムで筋トレをしています。疲れて行くのが嫌な日もありますが,帰り道は気分爽快で,夜もよく眠れます!

膝や腰の調子を崩している方は無理をせず,ストレッチによって体の緊張をほぐすことも,自律神経のバランスを整えるのに有効です。

 

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