院長コラム

Director's column

気管支喘息について

気管支喘息 ひとこと解説

・空気の通り道の「気道」が,むくんで狭くなる病気です。

・夜間~明け方の「ヒューヒュー・ゼイゼイ」と音が聞こえる息苦しさが特徴です。

・問診,呼気一酸化窒素測定,呼吸機能検査や画像検査で総合的に診断します。

・治療は毎日の吸入薬が主役です。安定時と発作時の対応が重要です。

・大人の喘息で完全に治るのは10%程度です。継続治療が必要です。

気道がむくむのは・・・?

喘息患者さんの気道は,実は常に「炎症」が起きています。
「炎症」とは,赤くなったり,腫れたりすることを言います。やけどやケガも一種の炎症です。喘息患者さんでは,
症状があるときはもちろん,症状がなくても気道の炎症が起こっています。

炎症を起こしている気道は,冷たい空気(冷房の冷気など)やタバコの煙,ほこり,あるいは過労やストレスといった様々な
刺激に敏感になっています。この敏感な状態を気道過敏性といいます。

この気道過敏性があるときに何らかの刺激が加わると,気道はむくんで,内腔が狭くなったり,分泌物が増えたりします。
やけどやケガでも,皮膚が腫れたり,ジュクジュクと分泌物がでることがありますよね?

ヒューヒューゼイゼイするのは・・・?

気道の内腔が狭くなると,狭い気管支を呼吸が通り抜けるときに「ヒューヒュー」と音がなったりします。分泌物である痰がふえると,それが「ゼイゼイ」の原因になります。


また気管支喘息の発作時には気道の広がりを調整している筋肉が縮み,これがさらに気道が狭くなる原因になります。
すなわち喘息発作では,

1)炎症によって内腔が狭くなる
2)分泌物が増加する,
3)気道の筋肉が縮んでさらに内腔がせまくなるといったことがおこり,これが特徴的な症状の原因となっているのです。

夜間や明け方に苦しくなるのは・・・?

1.交感神経と副交感神経のバランス

一般的に,人間は精力的に活動する日中は交感神経が優位になり,体を休ませる夜間は副交感神経が優位にはたらきます。

交感神経は日中の活動時に体に十分な空気を取り入れるために気道を拡げるように作用します。夜間~朝方にかけては副交感神経が優位になるため,日中に比べると気道を拡げようとする力の働きがよわまり,気道が狭くなり,その結果息苦しさの一因となるのです。

2.気道の炎症

気道過敏性は日中に比べて夜になると強くなります。1)炎症によって内腔が狭くなる,2)分泌物が増加する,3)気道の筋肉が縮むといった苦しさの原因が,夜にはおこりやすいのです。

3.その他の原因

ベッドや布団周囲は,清潔に保とうとしても,どうしてもダニやほこりが多い環境です。こういった原因物質によってアレルギー反応が起こっている場合があります。

また,就寝時に軽微な胃酸の逆流がおこっていたり,鼻水がのどの奥にたれこんでいたりなど,喘息とは直接は関係のない原因がひそんでいることもあります。

診断方法は・・・?

1)喘息に特徴的な症状があるか,喘息以外の病気を疑う必要がないか問診する

2)レントゲン検査をおこない,喘息以外の原因がないかを確認する

3)呼吸機能検査(肺活量の検査)で,気道が狭くなっているかどうかをチェックする

4)気道の炎症が起こっているか,呼気一酸化窒素検査をおこなう

残念ながら,一発で喘息かどうかを見極める検査方法はありません。1)~4)のことを意識し確認しながら,総合的に喘息かどうかを判断します。これはときに難しい場合もあり,呼吸器内科やアレルギー科の専門的な知識が必要です。

【呼気中一酸化窒素とは】

 喘息で気道の炎症が起きているとき,気道の表面からは,様々な物質が作られたり放出されたりしています。その中の1つが一酸化窒素です。とくにアレルギーによって気道の炎症が起きると一酸化窒素が増えます。この一酸化窒素が高いか低いかをしらべることで,気道にアレルギーに関連した炎症が起きているかどうかのヒントがえられます。

治療は・・・?

喘息の症状を引き起こすもっとも大きな問題は,気道の炎症です。これを鎮める薬が,「吸入ステロイド薬」です。

「ステロイド」は副作用が多い怖い薬と感じる方もすくなくないかもしれません。たしかにステロイドは長期に一定量以上を内服すると,高血圧や糖尿病,骨粗しょう症や高コレステロール血症といった様々な疾患の原因になったり,ときに重い感染症の原因になることもしられています。

しかし喘息の治療で使用する「吸入ステロイド」は,内服する場合と比べて体内に入る量が極めてすくなく,およそ1/100程度とされています。日本でも吸入ステロイドが広く喘息治療に使われるようになってすでに20年以上が経過していますが,副作用はほとんどおこらないことが証明されています。

吸入ステロイド薬には色々な種類があります。薬の種類や強さ,効果時間の長さや,吸入する粒子の大きさ,吸入装置,値段の違いなど,じつに多種多様です。草ヶ谷医院ではそれぞれの薬のメリットやデメリットを実際の吸入薬をご覧にいれながら説明します。患者さんひとりひとりに,もっとも適切な吸入薬を探していきます。

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