院長コラム
Director's column
2024年夏 またもやコロナが勢いづいている!?

2024年7月18日現在沖縄県を含めた九州地方で,ふたたび新型コロナの感染者数が急増しています。5塁感染症になって,患者さんの全数登録が終わってから1年以上が経ちました。流行の判断基準は定点医療機関あたりの感染者数になりますが,この数が全国的に増加し続けています。
最近は熱がでるとまずは熱中症を疑いたくなるほどの猛暑ですが,「熱中症かな~。涼しいところで休んでいるのになかなか治らないな?」と思っていたら,実はコロナウイルス感染症だったなんてケースもきっと起こるでしょう。今一度現状把握を行いましょう。
Q.流行ってるって?どれくらいやばいの?
静岡市ではまだ大流行というほどではないですが,それでも発熱して来院された患者さんを検査すると,毎日数名のコロナ感染症陽性者がみられるようになってきています。
現在新型コロナの流行が報道されるときに使用されているのが「定点医療機関あたりの感染者数」です。代表的な医療機関において,1週間あたりに診断された感染者数のことを指します。当院も静岡市の定点医療機関に指定されています。

表は全国の1週間あたりの定点報告数になります。5月の頭からゆっくり,それでも確実に増え続けています。まだ今のところ全国の報告者数は10に届かない程度です。インフルエンザではこの定点報告数が10を超えると「注意報レベル」,30人を超えると「警報レベル」と解釈されることが多いです。新型コロナウイルス感染症については,この明確な判断基準はありませんが,過去の経 過をふりかえると,20人~30人になってくると,医療機関の逼迫さが問題になってくることが多かったため,そのあたりが注意や警戒を始める目安になるでしょう。
沖縄県は29人と1年ぶりに警報級の流行に陥っています。皆さん覚えていますか?昨年は沖縄県での流行に遅れること1~2ヶ月程度で本州でも流行したことを。今年の夏休みシーズンは少し注意が必要かもしれません。

Q.最近のコロナ感染症って,どんな感じ?
私自身の実感としても(おそらく皆さんの実感と重なるとおもいますが・・・),若い世代にとっては現在のコロナウイルス感染症は,いわゆるインフルエンザやかぜ症候群とそれほど大きな違いはなく治っていくイメージです。
高齢者においてもインフルエンザに比べると肺炎を起こしてしまうケースは多いですが,それでもデルタ株が流行したころのような致命的な感染症といった様相からはだいぶかわり,最近の毒性は弱まっていると感じます。(ただし長期的なリスクについてはまだ不明確な点はあります。)
現在主流となっているオミクロン株の亜系統「JN.1」の子孫株である「KP.3」は,これまでの免疫をかいくぐり,どうやら感染力がやや強いという報告が出ています。重症化率が高いといった話は今のところ聞かれていません。この点はすこし安心感がありますね。
Q.重症化率があがってないなら,それほど大騒ぎしなくていいじゃない?!
私もそう思います。仮に感染しても,本来はご自宅でご家族にうつらないように配慮しながら静かに寝て,休んでいるうちに少しずつ治っていくのを待てば良い方が圧倒的に多いはずです。それでもニュースで流行と言い始めると,熱がでると元気でもすぐに医療機関に患者さんが集まります。やっぱり皆さん,熱がでると不安だったり,少しでも早く良くなりたいとお考えになったりしますよね。
誤解を恐れずにいえば,リスクが低い方については診断をつけてもつけなくても,ドラッグストアで買える解熱剤を内服して寝ていれば,医療機関で処方される薬を内服して様子をみるのと大きな違いはないことが大多数です。さらに言うとドラッグストアで販売元のしっかりした抗原キットを買えば,診断までつけられることもあります。
完全に私見ですが基礎疾患がなく体力がある方は,発熱しても慌てず,様子を数日みる。その間に良くなる気配がないときや,症状が悪化する場合には医療機関を受診すればいいんだね!という心構えが,もう少し浸透しても良いと感じます。
Q.じゃ,問題ないってことね??

問題がないわけではありません。問題は,感染者数が増えると,それに伴い入院が必要な特に高齢者が増えていく,すると地域の医療がひっ迫していくという点が挙げられます。「風邪だから入院してなくて いい」のは普段元気な若者から中年世代の話です。感染者数が増えれば増えるほど,余力の無い高齢者の入院患者数は必ず増えていきます。
実際に入院患者数も5月上旬から増え続けています。またコロナウイルス特有の感染性の高さ,うつりやすいという特徴から,医療機関ではクラスターが時折みられます。繰り返しになりますが,KP.3が感染力が強く患者さんの全体数が増えれば,重症化する方の数も増えるので,油断していいですよとお伝えするつもりはありません。
Q.熱がでたら熱中症だと思ってました!
「昨日から熱がでました」「頭がぼーっとする」などの相談で,熱中症を疑って当院を受診される患者さんの中にも,新型コロナの方がちらほらと混ざるようになりました。
熱中症とコロナをはじめとする感染症,どちらも体温が上昇しやすいことから一見どちらなのか紛らわしいことがあります。一般的にはコロナ感染症では,発熱や倦怠感といった熱中症にもみられる全身症状のほか,のどの痛みや鼻水,咳などといった上気道症状を伴うことが多いです。一方熱中症では上気道症状は通常はみられません。このあたりが一つのポイントになるかもしれません。
Q.感染対策は?

今まで通り,人込みをさける,流行期にはマスクをつける,手洗いをするといった基本対策をみなおしましょう。もちろんこの猛暑でマスクをするのは現実的ではないと思います。
今の静岡市で,屋外でマスクをつけるのは,感染対策のメリットよりも不快感のデメリットのほうが大きいかもしれません。
ただし今後もっと流行した場合には,要所々々でそういった対応も考える必要があります。杓子定規にならないように,メリハリをつけて感染対策をしていきましょう。
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