院長コラム

Director's column

非結核性抗酸菌症って、ご存じですか?

非結核性抗酸菌症(NTM症)とは?

非結核性抗酸菌症(NTM症)は、抗酸菌というグループのばい菌の中の,結核菌とらい菌以外の「非結核性抗酸菌」という菌が原因で、主に肺で起こる感染症です。

非結核性抗酸菌はNTMと呼ばれます。NTMは約200種類あります。非常に多くの菌種がありますが,その中でも患者さんがとくに多い有名な菌種が,いくつかしられています。

日本ではNTM症の約8~9割が「MAC」と呼ばれるMycobacterium aviumやMycobacterium intracellulareという菌によります。これらを総称したのが「MAC」です。

患者さんが増えているんです!

結核患者は減少していますが、NTM症は近年急増し,死亡者数はすでに結核を上回っています。
人口10万人あたり,結核の患者さんの数は10人以下になっていますが,NTM症の患者さんは19.2人まで増えています。この10年間で明かに増えている,新興感染症といえます。

誰がNTM症になりやすい?

NTM症は特に中高年の痩せた女性に多いことが知られています。基礎疾患がなくても発症することがあります。

それ以外のリスク因子としては,気管支拡張症などの既存の肺疾患があることが知られています。

またNTMは環境中に存在し、特に土や水回りに多く見られるため、ガーデニングや農作業が感染のリスクを高める可能性があります。

症状と診断方法

代表的な症状としては咳が続くこと,痰や血痰,息切れ,胸の痛みなどがあります。さらに倦怠感,体重減少,微熱などの全身症状が現れることもあります。NTM症の診断は症状や画像検査,そして菌の検出によって確定されます。まず胸部レントゲンやCTで肺に特徴的な異常影が確認されることが重要です。

次に実際に病原菌であるNTMを確認する必要があります。一般的には痰の検査でこの菌が2回以上検出されることが必要です。

NTM症のタイプ:NB型とFC型

NTM症は病状や画像所見に基づいて2つのタイプに分けられます。

「NB型(結節・気管支拡張型)」は、中高年の痩せた非喫煙女性に多く見られます。肺に小さなつぶつぶの影(結節)や、気管支が広がった状態(気管支拡張)が確認されるのが特徴です。比較的ゆっくり進行し、治療によってコントロールしやすいことが多く、予後(治療後の経過)は比較的良好とされています。

「FC型(繊維空洞型)」 喫煙歴のある高齢男性に多いとされ、肺に空洞ができることが特徴です。進行が早く治療も難しく、予後はあまり良くありません。このようにNTM症は症状や画像所見に基づいてタイプが分かれ、それによって治療方法や予後も異なります。

治療について

病気の活動性や症状,画像所見,患者さんの全身状態などを考慮し,すぐに治療を開始せず経過観察を行う場合があります。ガイドラインでは治療を推奨する方向ですが,軽症で画像所見も軽度な場合や高齢者では副作用のリスクも考慮し経過観察を選択することもあります。
しかし治療開始が遅れると空洞が形成されるなど病気が悪化し,治療効果が低下する可能性があるため,定期的な診察で経過をしっかり見ていくことが大切です。
フローチャートのように,症状が無く,空洞形成や気管支拡張がないか軽度,75歳以上のご高齢の患者さんにおいては様子を見る場合も多いです。

標準的な薬物治療

リファンピシン、エタンブトール、クラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)の3種類の飲み薬を併用します。特にクラリスロマイシン(またはアジスロマイシン)が重要で、これが効くかどうかが治療成功の鍵となります。
治療期間は痰から菌が検出されなくなってから最低1年以上継続するのが目安です。日本の報告では、より長く治療を続けた方が、再発率が低くなる可能性が示唆されています。標準治療による菌陰性化率は約6割であり、治療を頑張っても治療終了後に再発してしまうケースも少なくないという課題があります。

副作用と日本の治療現状

治療薬には様々な副作用があり、食欲不振、肝機能障害、発疹、視力低下、血小板減少、痒みなどが起こり得ます。約2-3割で何らかの副作用が出現し、副作用で治療中止を余儀なくされることもあります。日本の保険診療データベースの調査では、肺NTM症患者さんのうち標準治療をきちんと受けられているのは約30%に留まっている現状が示されています。

日常生活の注意点

日常生活では、規則正しい生活とバランスの取れた食事が大切です。特に体重減少が見られる患者さんでは、食べやすいものや好きなものでも良いので、しっかりカロリーを摂取することが重要です。

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