院長コラム

Director's column

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)感染症
  正しく知って,適切に備える!

ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は2001年にオランダで発見された呼吸器ウイルスで,一般的な風邪の症状を引き起こします。特に乳幼児や高齢者,免疫力が低下している人が感染すると重症化する可能性があり,注意が必要です。

2024年1月現在中国北部を中心に感染者数が増加していることが国際的な注目を集めているのをご存じですか?

コロナ禍を経て我々は学んだはずです。むやみに恐れることはやめましょう!ヒトメタニューモウイルス感染症の特徴,予防策,そして正しく恐れるための知識を勉強しましょう。

中国の感染状況

2025年1月7日,WHO(世界保健機関)は北半球の呼吸器感染症の流行状況に関する報告を発表しました。それによると中国北部でヒトメタニューモウイルスの感染者数が増加していることを確認されたとしています。

中国疾病予防コントロールセンターの報告では,2024年12月23日から29日の1週間でヒトメタニューモウイルスの陽性率は6.2%に到達し,特に14歳以下の子どもでの感染が目立つとのことでした。この陽性率は11月中旬と比較して約2倍に増加しており,急激にふえているようです。冬の寒さや換気不足,人の移動が増えるといった様々な要因が影響しているとされています。さらに中国ではインフルエンザウイルスの陽性率が同時期に30.2%と非常に高く,複数の呼吸器感染症が同時に流行したようです。春節(旧正月)の長期休暇で感染リスクがさらに高まることが懸念されます。現時点ではWHOは「感染者数の増加はこの時期に想定される範囲内である」としながらも,中国当局と連携し感染拡大の監視を続ける方針を示しています。

Q.ヒトメタニューモウイルスって,そもそもなに?

ヒトメタニューモウイルスはRSウイルス(RSV)と同じ仲間に属し,実は国内外で決して珍しいウイルスではありません。小児の呼吸器感染症の5~10%,成人の2~4%がこのウイルスによるものとされています。実は皆さんや皆さんのお子さんなど,今までにどこかの時期にかかったことがあるはずなんです。

感染による主な症状は,咳や発熱,鼻水鼻づまり,息切れといったいわゆる風邪症状です。多くのケースでは軽い風邪症状で済みますが,ときに乳幼児や高齢者,基礎疾患がある人では気管支炎や肺炎に進行することがあります。一度の感染で免疫が完全に獲得されるわけではないため,何度も感染を繰り返すことがあります。とはいっても年齢とともに症状は軽くなる傾向があります。

Q.なにしたらうつっちゃうの?治療方法は?

ヒトメタニューモウイルスは咳やくしゃみを通じた飛沫感染や,感染している人が触れた物を介した接触感染によって広がります。潜伏期間は3~6日とされています。過去には集団生活などで広がった事例も報告されています。

2025年現在ヒトメタニューモウイルスに対するワクチンや特効薬はありません。そのため治療は主に症状を緩和させる対症療法が中心です。症状をごまかしている間に,自分の免疫の力でウイルスをやっつけて治っていくという作戦です。症状がひどい場合は咳や鼻水を抑える薬が処方されることがあります。ときにウイルス感染と同時に細菌感染を引き起こすケースもあるため,必要に応じて場合は抗菌薬を使用することもあります。

Q.どうやって予防するの?対策は?

ヒトメタニューモウイルスの感染予防には,他の呼吸器感染症と同様の基本的な対策が有効です。もうみなさん,分かっていますよね?

  1. 手洗い・アルコール消毒:外出後や食事前後に石けんで手を洗いましょう。
  2. マスクの着用:飛沫感染を防ぐため,人混みに出る際や症状がある場合はマスクを着用してください。マスクはウイルスの侵入を防ぐことができないため,一人がしてもあんまり意味がありません。流行期にはみんなですることで,広がっていく勢いを弱める効果が期待できます。
  3. 換気と加湿:部屋の空気を定期的に入れ替えましょう。気道に感染するウイルスは,一般的に湿度を50~60%程度に保つと活動性がおちると言われています。
  4. 家庭内での感染対策:症状のある人がいる場合は,濃厚な接触をさけるように。食事を一緒にとるのは控えた方がよいでしょう。

国内の事例から学んでみよう!

過去には日本でも以下のような事例が報告されています。

【小児病院での重症例】

  沖縄県では2022年4月~5月の2か月間で,発熱や低酸素血症があり,人工呼吸管理や高流量の酸素投与が必要となった16例のうち,7例がヒトメタニューモウイルス感染症と診断されたと報告されています。年齢の中央値は1歳8か月(範囲は0歳から6歳)でした。7例のうち5例が基礎疾患を有していましたが,全例で後遺症なく退院となっています。

【高齢者施設での集団感染】

2016年には特別養護老人ホームの同じ階で入居していた51人中28人が感染しました。9人が入院し,そのうち3人が死亡しています。ただしこの死因は3例とも老衰と診断されています。

 

これらの事例は特定の集団や施設で感染が拡大しやすいことを示しているといえます。とくに小さなお子さんや高齢者がいる場合には,家族内や施設での感染対策が重要です。

 

まとめ

ヒトメタニューモウイルスはほとんどの場合軽い風邪症状で済む感染症です。それでも乳幼児や高齢者,免疫が低下している人にとっては重症化するリスクがあります。中国を中心とした感染拡大は注視すべき状況ですが,過度に恐れる必要はありません。感染対策を適切に行っていけばよいだけです。

正しい知識を持ち冷静に対応することで,自分や家族の健康を守ることができます。健康で安全な冬を過ごしましょう。

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