院長コラム

Director's column

大阪万博でも話題に!レジオネラ肺炎とは?
原因・症状・感染経路・予防法まで呼吸器内科専門医がわかりやすく解説します

(静岡市清水区 草ヶ谷医院 呼吸器内科・アレルギー科)

2025年の大阪・関西万博で「人工池から基準を大きく超えるレジオネラ属菌が検出された」というニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか。人工池の管理が不十分で一時立ち入り禁止区域が設定されるなど,大きな話題となりました。

こうした報道を通じて「レジオネラ菌って何?本当に危険なの?」と不安に感じた方も少なくないのではないでしょうか?実はこのレジオネラ菌,決して特殊な場所だけの問題ではなく私たちの身近な暮らしの中にも潜んでいる細菌です。

今回は呼吸器内科専門医の立場から,レジオネラ肺炎の原因や症状,感染経路,治療法,予防法までをわかりやすく解説します。

レジオネラ肺炎とは?【原因菌】

レジオネラ肺炎は「レジオネラ属菌(Legionella)」という細菌が原因で発症します。特にヒトへの感染が多いのがLegionella pneumophila(レジオネラ・ニューモフィラ)という種類です。この菌は自然界の川や湖にも存在しますが,実は私たちの日常生活では以下のような場所にひそんでいます。

  • 加湿器の水タンク
  • 浴槽・温泉・スーパー銭湯の循環水
  • シャワーヘッド内部
  • ビル・病院の冷却塔(空調設備)
  • 給湯配管や貯湯タンク

こういった場所って,しっかりと掃除をして清潔管理をしないととっても汚れやすいんです。ぬめぬめっとした様子,想像できますよね?

ぬるま湯(約25〜45℃)が最も繁殖しやすい温度帯で,放置するとバイオフィルムというぬめりの膜を作って急激に増殖します。

感染経路【人から人には感染しません】

レジオネラ肺炎は人から人にはうつりません。感染はエアロゾル(霧状の微細な水滴)の吸入によって起こります。

汚れた加湿器やシャワーヘッド,冷却塔などから舞い上がったエアロゾルを吸い込むことで,肺の中に菌が入り込み感染が成立します。サウナや噴水なんかも危険な場合があります。人からの咳やくしゃみのような飛沫感染ではありません。

この特徴のため,家庭内だけでなく温泉施設・老人ホーム・病院・ホテルなどでも集団感染が報告されています。

フィラデルフィア事件:歴史的な発見

レジオネラ肺炎が初めて発見されたのは,1976年アメリカ・フィラデルフィアのとあるホテルでの在郷軍人大会の集団感染事件でした。在郷軍人と平時は一般の国民として生活しながら,戦時などは必要に応じて兵隊として現場にむかう予備役や退役軍人を指します。いざというときには国防のために戦場に赴く人々です。このパーティーに参加した人々が,次々に原因不明の肺炎で倒れていったのです。最終的に発症者は200名以上,死亡者30名以上にわたりました。原因はホテルの冷却塔から,エアコンを通じてまき散らされたレジオネラ菌だったのです。

長期間の調査の末この新種の細菌が発見され「Legionnaires’ disease(在郷軍人病)」と命名されました。この事件を機に世界中で建物の水回り管理が厳格化されました。

症状【普通の肺炎との違い】

レジオネラ肺炎は風邪やインフルエンザと似た症状で始まるため,早期診断が難しいことがあります。

主な症状としては

  • 39℃以上の高熱
  • 咳、息切れ
  • 胸痛
  • 筋肉痛・関節痛
  • 消化器症状(下痢・腹痛)
  • 頭痛・意識障害

などが挙げられます。肺炎なのに,妙におなかの症状が強い,なんだか様子がおかしい,変な会話をしている?など,単なる肺炎+αのような症状があると,専門医は「・・・もしかしてレジオネラ??」なんて疑って,周辺地域で似たような患者さんがいないか探したりします。そう,ときどき集団発生していることがあるからです。特に高齢者・喫煙歴のある方・持病がある方・免疫が低下している方は重症化リスクが高く注意が必要です。

診断方法と治療って,どうなの?

当院では以下の検査を組み合わせて診断します。

  • 尿中抗原検査(迅速・高感度)
  • 胸部CT検査
  • 血液検査
  • 必要時は特殊な喀痰培養(BCYE寒天培地使用)

「疑うこと」が最も重要なポイントです。症状や経過からレジオネラ肺炎を見逃さないよう注意しています。

治療法【βラクタム系は無効】

レジオネラ菌は細胞内に潜む性質があるため,通常の肺炎治療薬(ペニシリンなどβラクタム系)は効きません。そのためニューキノロン系(レボフロキサシン・モキシフロキサシン等)などの治療薬を用います。重症例では治療期間が10〜21日程度必要となることもありますが、適切な治療で完治が期待できます。

予防法【ご家庭でも実践可能です】

レジオネラ肺炎は予防が可能な感染症です。水回りの衛生管理が最も重要です。

  • 加湿器の水は毎日交換し,週に1回はしっかり洗浄・消毒
  • シャワーヘッド・浴槽・風呂釜も定期的に清掃
  • 温泉・スーパー銭湯は衛生管理がしっかり行われている施設を利用
  • ビル・病院などの大型設備は法令に基づく定期点検・清掃

特に冬の加湿器管理は盲点になりやすいため注意が必要です。

まとめ 〜レジオネラ肺炎は身近な感染症〜

  • レジオネラ肺炎は身近な水回りから感染する肺炎
  • 正しい知識で予防・早期受診が大切
  • 呼吸器内科専門医による診断と治療が重要

草ヶ谷医院はレジオネラ肺炎の診断・治療に対応しています

草ヶ谷医院(静岡市清水区)は呼吸器内科・アレルギー科専門クリニックです。
咳,息切れ,微熱,倦怠感などの症状でお困りの際は早めにご相談ください。

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大石 敏弘医師
プロフィール

清水第八中学校、清水東高等学校を卒業後、浜松医大医学部に進学。

大学卒業後は、 静岡済生会病院、浜松医療センター、浜松医科大学医学部附属病院、島田市立総合医療センターを経て、再び現在静岡済生会病院にて地域医療に携わる。

糖尿病や甲状腺、高血圧・脂質異常症などの生活習慣病を専門とし、患者一人ひとりのライフスタイルに合わせた実践的な治療方針を重視している。

現在は当院に非常勤、そして静岡済生会内分泌科として勤務し、日々の診療にあたっている。

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