院長コラム
Director's column
2026年版 花粉症対策
草ヶ谷医院が教える「ラクに過ごす」ための実践法
花粉症は,植物の花粉が原因で起こる季節性のアレルギーです.2026年の春は,地域によっては例年以上の飛散が予測されています.
症状の特徴や日常生活でできる工夫,そして最新のガイドラインに基づいたお薬の選び方を,草ヶ谷医院がやさしく解説します.早めの対策で,この季節を元気に乗り切りましょう.
そもそも花粉症ってなんだっけ?
花粉症は,本来は体に害のない花粉に対して,免疫のシステムが過剰に反応してしまう「アレルギー性鼻炎」の一種です.
鼻や目から花粉が体内に入ると,体の中で「IgE抗体」という物質が作られます.これがマスト細胞(肥満細胞)という細胞にくっつき,再び花粉が入ってきたときに,IgE抗体と花粉がくっつきます。するとIgE抗体をはしわたしにして,花粉とマスト細胞がくっつくわけです。
花粉を感知したマスト細胞からは,「ヒスタミン」や「ロイコトリエン」といった化学物質が放出されます.これらの物質が神経や血管を刺激することで,症状が現れるのです.
よくある症状とよくある出方は?
主な症状は,以下の「3大症状」です.
- くしゃみ・鼻水:ヒスタミンという物質が神経を刺激して起こります.
- 鼻づまり:ロイコトリエンなどの物質が血管を広げて腫れさせることが原因です.
- 目のかゆみ・充血:花粉が目の粘膜に付着して起こります.
これらの症状により,睡眠不足になったり,仕事や勉強に集中できなくなったりするなど,日常生活の質(QOL)が下がってしまうことが分かっています. また,2026年のスギ花粉は,北日本や東日本では例年より多く飛散し,特に東北北部などでは非常に多くなると予測されています.
2020年以降の新しい知見
近年の研究や新しい国際的なガイドライン(ARIA 2024-2025)では,患者さん一人ひとりの希望や症状に合わせた治療(パーソン・センタード・ケア)が重視されています.
- デジタルツールの活用:アプリを使って日々の症状を記録し,それに基づいて治療を調整することが推奨されています.
- お薬の新しい組み合わせ:症状が重い場合,点鼻薬の中に「抗ヒスタミン薬」と「ステロイド薬」の両方が入った配合剤を使うことで,単独で使うよりも高い効果が期待できることが分かってきました.
- 初期療法の重要性:花粉が飛び始める前,あるいは症状が少しでも出始めた直後から治療を始めることで,粘膜が過敏になる「プライミング効果」を抑え,シーズンのピーク時の症状を軽くできることが確認されています.
日常生活でできる対策
お薬だけでなく,花粉を体に入れない工夫がとても大切です.
- 花粉を避ける:飛散の多い晴れて風の強い日や,雨上がりの翌日は外出を控えるか,対策を強化しましょう.
- 身を守る:メガネやマスクを着用することで,目や鼻に入る花粉を減らせます.
- 帰宅時のケア:家に入る前に衣服についた花粉を払い,帰宅後はすぐに洗顔やシャワーをして花粉を洗い流しましょう.
- 衣服は毛が多い物より,表面がツルっとしたもののほうが,花粉が付着しづらいため,家の中に花粉をもちこむリスクが減ります。
- 室内環境:窓を閉めて花粉の侵入を防ぎ,空気清浄機(HEPAフィルター付きが推奨されます)を活用しましょう.
Q.最新の薬の選び方は?
症状やライフスタイルに合わせて,最適なお薬を選ぶことが大切です.
- 飲み薬(抗ヒスタミン薬):くしゃみや鼻水に効果的です.以前の薬(第一世代)は眠気が出やすいものでしたが,最近の薬(第二世代)は眠くなりにくく,運転などの制限がないものも増えています.
- 眠気がすくない第二世代の代表的な薬は,ビラノアやデザレックス,アレグラなどです。ビラノアは空腹時に内服することが勧められています。効果の切れ目の実感がある方は,一日2回のアレグラを選んでみてもよいでしょう。
- 点鼻薬(鼻噴霧用ステロイド薬):鼻に直接噴霧するタイプで,くしゃみ・鼻水・鼻づまりのすべてに高い効果が期待できます.全身への副作用が少なく,中等症以上の第一選択薬として推奨されています.実は目の痒みにも効果があることが分かっています。
- 目薬:目のかゆみがつらい場合に使います.
- 重症の場合:飲み薬と点鼻薬を併用したり,新しい注射のお薬(抗IgE抗体)が検討されることもあります.
「眠くなるのは困る」「鼻づまりが特につらい」「目もかゆい」など,あなたの困りごとを医師に伝えてください.一緒にベストな治療法を探しましょう.
Q.受診のタイミングは?
花粉症は,我慢せずに早めに相談することが解決への近道です.草ヶ谷医院では,症状が出始める少し前,以下のようなケースでの受診をおすすめしています.
- □ 例年鼻水や鼻づまりで,睡眠や仕事・勉強に支障が出ている
- □ いつも市販薬を使っても症状が良くならない
- □ 花粉症のじきに咳が出たり,息苦しさを感じる(喘息の可能性があります)
- □ お子さま,妊娠中の方,持病がある方
2026年は飛散開始が2月上旬と予測されています.症状が出る前,または少しでも違和感をおぼえたら,1月下旬〜2月上旬頃にはご相談ください.
【Q&Aコーナー】
Q1.花粉症は完全に治りますか?
- 一般的なお薬は症状を抑えるものですが,「アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)」という治療法では,体をアレルギーの原因物質に慣らすことで,根本的な体質改善や長期的な症状の軽減が期待できます.
Q2.症状が出る前から薬を飲んだほうがいいですか?
- はい!おすすめです.花粉が飛び始める直前や飛び始めの時期から治療を開始する「初期療法」を行うことで,粘膜が敏感になるのを防ぎ,ピーク時の症状を軽くしたり,薬の量を減らしたりできる可能性があります.
以前は2週間前からとよく言われていましたが,最近の薬では即効性も期待できるため,花粉が飛び始めたらすぐ,あるいはわずかでも症状がでたらすぐの内服がガイドラインでも推奨されています。
Q3.市販の点鼻薬(血管収縮薬)を使い続けてもいいですか?
- ぜひ控えてください。注意が必要です.市販の「鼻づまりをすぐに治すスプレー(血管収縮薬)」は即効性がありますが,長く使い続けると逆に鼻の粘膜が腫れて症状が悪化する(薬剤性鼻炎)ことがあります.使用は短期間にとどめ,改善しない場合は受診してください.
Q4.マスクだけで対策は十分ですか?
- マスクは重要ですが,それだけでは不十分なことが多いです.目からの侵入を防ぐメガネの着用や,帰宅時の洗顔,そして症状に合わせたお薬の併用が推奨されます.
今日からできる5つの行動リスト
- 飛散予報をチェックする:飛散が多い日は外出を控えるか,対策を強化しましょう.
- 帰宅時に「持ち込まない」:玄関前で衣服の花粉を払い,すぐに着替えや洗顔をしましょう.
- 早めの受診計画:本格的に飛散する1〜2週間前(1月下旬頃)を目安に相談しましょう.薬を準備しておくのが大切です。
- 寝室をクリーンに:空気清浄機を活用し,就寝中の鼻づまりを防いで良質な睡眠を守りましょう.
- お薬は用法通りに:点鼻薬や飲み薬は,症状が軽くても医師の指示通り継続することが大切です.
免責:本記事は一般的な情報提供を目的としています.個別の診断・治療については,かかりつけ医師にご相談ください.
参考文献
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