院長コラム

Director's column

麻しん(ましん,はしか)が流行りはじめている?!2024年版

日本国内で麻しん(ましん,はしか)の感染者が増加していることがニュースになっていることをご存知でしょうか。2023年春にも麻疹が出現したニュースがあり,合計28例が報告されました。2023年以降は新型コロナが5類感染症に変更になったことで人の往来が増え,今年になりまた増えてきているようです。

2024年3月14日現在,大阪や兵庫,京都,愛知など様々な場所で発症が報告されています。同じ飛行機や新幹線に乗り合わせただけなのに感染してしまうほど,実はとっても感染力の強いウイルスなのです。

Q. いまさらですが,麻しんとは?

いわゆる「はしか」のことです。年齢に関係なく感染する可能性があり,とても広い範囲にひろがっていく非常に感染力の強いウイルスによる病気です。

ワクチンを打っていない方,いままで麻しんにかかったことがない方が感染すると,ほぼ100%症状がでます。

合併症を引き起こしときには死に至ることもある怖い側面もある病気です。

Q.日本ではやりはじめたって,どんな状況なの?

日本は2015年から「麻しん排除状態」に認定されています。これは,日本国内では「日本にいる麻しんウイルス」による流行が起こっていないということです。もちろん今後海外から持ち込まれた麻しんウイルスが国内でひろがっていくことはありえます。今はまさにそれが起ころうとしているのが心配されています。

コロナ禍で国際旅行が激減したため,麻しん症例は非常に少なくなっていました。2023年から2024年にかけて,海外からの人の流入や,日本在住の方が海外にいく機会も大幅に増えています。人の移動が非常に活発になってきており,そのぶんだけ麻しんの海外からの持ち込み事例も,今後ますます増えることに用心しておく必要があります。

Q.麻しんって,どんな症状があるの?

麻しんの症状は体内にウイルスが侵入(感染)してから,およそ10~12日後に出現(発症)します。初めにでてくる症状は,鼻水,咳,微熱など風邪のような症状です。

目の充血や光に敏感になる症状を伴うこともあります。

通常の風邪であれば3-4日でピークを過ぎて症状が改善しますが,麻しんの場合には3-4日過ぎた頃から,ほっぺたの内側や歯ぐきの内側に「コプリック斑」と呼ばれる白い斑点がみられることがあります。

さらに再び38-39℃の発熱とともに,首周り,顔周囲から全身へと拡がっていく皮疹がとても特徴的です。

Q.麻しんはどうやってひろがるの?

麻しんウイルスは,感染者が咳やくしゃみをしたときに発生する飛沫によって広がります。ウイルスを含む飛沫は数時間空気中に留まります。また飛沫によってウイルスに汚染された物の表面では,最大2時間までウイルスの感染力が持続するとされています。

感染者は発疹が出る前後のおよそ4日間,周囲に麻しんを感染させる可能性があります。麻しんはワクチン未接種の人の間で容易に広がります。1人の麻疹患者が,平均して12~18人の無防備な人に感染させることができると推定されています。あれだけ世間を騒がせたコロナウイルスは2~3人程度に,インフルエンザは1~2人程度といわれているため,ずっと強い感染力といえます。

Measles:麻しんは,一人の患者さんから12-18人にうつるとされています。

Influenza:インフルエンザ,Pertussis:百日咳,Rubella:風疹,Mumps:おたふく,Smallopox:水ぼうそう

Q.特に注意しなくてはいけないのは誰ですか?

一度麻しんにかかったことをしっかりと覚えている方,確認出来ている方は大きな心配は不要です。一度麻しんにかかると,麻しんの抗体はずっと続くと言われています。(ただし非常に高齢の場合や免疫力が弱っている場合は別です。)

したがって,今までの人生で麻しんにかかったことのない人,またワクチンを2回接種していない方は,年齢に関係なく麻しんにかかる危険性があります。

麻しんにかかったことがあるかどうかはっきりわからない場合には,医師と相談してください。

たとえかかったことがある人がワクチン接種をしても,副反応は強くなりませんので,念のためワクチンを打っておくという考え方もあります。

Q.私はワクチン接種を受けた方が良い?

現在麻しんワクチンは国の定めた定期接種が行われているため,対象年齢の方々(1歳児,小学校入学前1年間の幼児)は積極的勧奨の対象です。母子手帳を確認すれば,自分が接種しているかわかるはずです。

成人の場合「麻しんにかかったことがなく,ワクチンを1回も受けたことのない方」は,ぜひかかりつけの医師にご相談ください。

2000年(平成12年)4月2日以降に生まれた方は,定期接種として2回の麻しん含有ワクチンを受けるチャンスがあったはずですが,それ以前に生まれた方は,定期接種として1回のワクチン接種のチャンスがあった,あるいは定期接種のチャンスがなかった年代です。

そのため麻しんにかかったことがなく,2回の予防接種を受けたことがなかった方で,特に医療関係者や学校などの職員など麻しんにかかるリスクが高い方は,予防接種についてかかりつけの医師にご相談ください。

麻しんワクチンは1回接種のみでは2-5%の割合で免疫が十分には得られない場合がありますが,2回接種をすると免疫獲得率は97-99%以上とされています。

Q.ややこしいな?年齢別におしえてくれない?!

下の表を目安にしてください。2回ワクチンを打ったことをしっかり覚えている方,麻しんにかかったことをしっかり確認できる方は打たなくても大丈夫です。

Q.麻しんの予防接種を受けるのにMRワクチン
 (麻しん風しん混合ワクチン)を接種してもいい?

麻しんの予防対策として,MRワクチンは単独ワクチンと同じくらいの効果が期待できます。またMRワクチンを接種しても健康への影響に問題はありません。むしろ風しんの予防につながる利点があります。

ただしMRワクチンは生ワクチンですので,妊娠している女性は接種できません。妊娠していなくても,接種後2カ月程度の避妊が必要です。これはおなかの中の赤ちゃんへの影響を出来るだけ避けるためです。

Q.麻しんにかかったらどうするの?治療方法はあるの?

麻しんはウイルスによって引き起こされるため,抗生物質は効きません。

そのため麻しんに対する特別な治療法はありません。ほとんどの場合水分補給や解熱剤など症状をやわらげる治療を行って,しぜんに回復するのを待ちます。また麻しんが家族や友人にひろがるのを防ぐために,様々な対策をとる必要があります。

麻しんにかかってしまったら,感染者はワクチン接種をしていない人にうつさないように,学校や職場には行かないようにしましょう。ご家族でも接触はできるだけ控えましょう。

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