院長コラム

Director's column

初夏から始まる熱中症対策について

◆梅雨どきと真夏に要注意

梅雨の晴れ間や,梅雨明けの蒸し暑くなった時期から熱中症は増え始めます。
この時期は身体がまだ暑さに慣れておらず,上手に汗をかくことができません。
熱が体にこもりやすく,熱中症につながります。

2015夏季熱中症患者発生数(東京23区)

次第に身体が暑さに慣れてきますが,7月~8月の日中など,最高気温が高くなった日にも熱中症の患者数が増加します。
熱帯夜が続くと夜間も体温がさがらないため,熱中症が起こりやすくなることも知られています。
熱中症による救急搬送は,真夏日(最高気温が30度以上)になると発生し始め,猛暑日(35度以上)では急激に増加します。

引用)森本武利,中井誠二:熱中症(II)熱中症の疫学. 産業医学ジャーナル 39(4):24-30, 2016.

◆熱中症を引き起こす条件は?

「環境」と「体」と「行動」によるものが条件としてあげられます。「環境」要因は,気温や湿度が高い,換気(風)が弱いなどがあてはまります。「体」の要因は,強い強度の労働や運動などの「行動」によって体内に熱が生じたりすること,あるいは暑い環境に体が十分に対応できないことなどが挙げられます。これらが単独でも,また重なったりすることで熱中症が引き起こされる可能性があります。

環境要因:気温・湿度が高い,風が弱い,締め切った室内,風通しの悪い部屋,クーラーの故障,強い日差し,急激に暑くなるなどなど・・・。

体の要因:高齢者や乳幼児,下痢や発熱患者など元々脱水状態,二日酔いや寝不足などの体調不良・・・。

行動要因:激しい運動,慣れない運動,長時間の屋外作業,気温の高い室内での作業など・・・。

◆熱中症の症状と分類

熱中症にはさまざまな症状があるため,それぞれに病名がついています。

1) 熱失神

暑い環境下で,皮膚血流が著しく増加すること,さらに多量の発汗によって脳への血流が一時的に減少するため立ち眩みが生じることをいいます。

2) 熱けいれん

汗で失われた塩分不足で生じる筋肉のこむら 返りや筋肉の痛みをいいます。

3)熱疲労

脱水が進行し,全身のだるさや集中力が低下した状態です。頭痛や気分の不快,吐き気,嘔吐などが起こり,悪化すると致命的な「熱射病」につながります。

4) 熱射病

中枢神経症状(脳の異常による障害)や腎臓・肝臓の機能障害,血液凝固異常(血液が固まったりする異常)まで生じた状態で,普段と違う言動やふらつき,意識レベルの低下や全身のけいれんが現れます。

実際の現場ではこれらの状態が混在しておこるため,熱中症が発生したときに は,重症度に従い表1のように,最近では軽症(Ⅰ度),中等症(Ⅱ度),重症(Ⅲ度)に分類しています。

◆WGBT(暑さ指数)ってご存じですか?

「気温」,「湿度」,「日射・放射」,「風」といった,体温に与える影響の大きい項目をもとに算出された数字です。WBGTは熱中症のリスクを判断するのに有用で,運動時や作業時はもちろんのこと,日常生活での指針としても活用されています。

日本生気象学会「日常生活における熱中症予防指針Ver3」(2013)より

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