院長コラム

Director's column

インフルエンザウイルスが夏に?なぜかジワジワ増えています!

最近発熱患者さんが多いよというニュースは,すでに耳にされている方も少なくないと思います。熱中症やコロナウイルス感染症がその主役メンバーではあるのですが,実はインフルエンザもじわじわと存在感を示し始めています。

従来は冬の感染症であったインフルエンザウイルスが夏に出始めているのは,今まではあまり知られてこなかった出来事です。

Q どれくらい患者さんがふえているの?

東京都ではインフルエンザは流行時期に合わせ,毎年第36週から翌年の第35週までの1年間をインフルエンザシーズンとして,どれくらい患者さんが発生しているのかを調査しています。2023年秋から2024年冬のシーズンは,第36週が2023年9月4日から始まります。インフルエンザ患者さんの発生確認は,現在のコロナウイルス感染症と同様に,「定点観測」になります。

 

東京都内の定点医療機関からの患者報告数は5.95と,例年の流行開始の目安となる定点当たり1.0人をすでに超えています。

2021~2022年シーズンは,グラフでは青ラインで,ほぼ患者さんがいませんでした。この時期はコロナウイルス感染症対策をみんなが真面目に(真面目すぎるほどに?)頑張っていたことも影響しているのでしょう。2022~2023年シーズン(黄色ライン)は少し患者さんがでていますが,コロナウイルス感染症の流行が始まる前の2019~2020年シーズン(緑ライン)に比べるとそこまで流行しませんでした。今シーズンは赤で示されますが,観測開始時点で5を超えていることがわかります。(赤ライン

ご存知のとおりインフルエンザといえば今までは冬に流行する病気でした。例年なら12月から流行り始めて,1~2月頃にピークを迎えて,3月ころに終わっていくイメージです。しかし昨年から今年にかけては,チョコチョコとインフルエンザ患者さんがみられており,流行開始の目安となる定点当たり1.0人を超える状況が続いているのです。こうした状況の中で,最近では増加傾向がみられており注意が必要です。

こちらは都内で集団発生した場所の報告になります。保育所,小学校で集団発生がたくさんみられていることがわかります。学級閉鎖のニュースもときどき耳にすることはありませんか?

重症化しやすい高齢者が多く生活している社会福祉施設での集団発生が起こっていることも少し心配ですよね。

 

これも都内のデータです。例年のインフルエンザの患者さんを,年齢別に色分けしたグラフです。

例年インフルエンザは,幼児~若年層に多い病気であることがわかります。2023~2024年シーズンはまだ1週のみのデータですが,やはりこの傾向は変わらないようです。

Q.全国ではどうなっているの?静岡は?

こちらは全国の発生動向を,都道府県別にしめしたものになります。インフルエンザが増えているのは,都内だけではないことがわかります。全国の非常に多くの地域で,流行開始目安の1.0を超えていることがわかります。

我が静岡県でもすでに報告数666,定点あたり4.79となっています。当院でもチラホラ患者さんがみられています。すでに静岡県内では20を超える小中学校で学級閉鎖が始まっています。これも例年とは違う状況ですね。

出典:厚生労働省「インフルエンザの発生状況」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou01/houdou.html

Q.インフルエンザの症状って?コロナと違うんだっけ?

インフルエンザの症状は,基本的には現在はやっているコロナウイルス感染症と非常に似ています。

喉の痛み鼻汁(鼻水),突発的な発熱,頭痛や関節痛,筋肉痛といった全身症状も共通しています。嗅覚異常や味覚障害はコロナウイルス感染症でよく知られていますが,インフルエンザでも鼻詰まりなどで似た症状が起こることもあります。

つまり現在の新型コロナウイルス感染症の症状は,インフルエンザの症状に非常によく似ているといえます。症状からの区別はまず困難です。

Q.感染対策は何か変わるの?

基本的な感染対策は,コロナウイルスに対する予防方法とかわりありません。あまりに神経質になってしまうと社会全体で疲弊してしまうことが身にしみました。できる範囲で継続しましょう。「できる範囲」は,その時の状況ごとに変わると思います。

コロナウイルスにしても,インフルエンザウイルスにしても,流行が落ち着いているときに過度に気配りをすると心がすり減ってしまいます。

今のように流行が気になってきたら,日々の手洗い,混雑した屋内では換気や可能ならマスク着用,人混みを避けるといった工夫は,自己防衛や他社への感染のリスクを下げるのに役立ちます。状況をみながら,適切に注意して日々をすごしていきましょう。

 

Q.インフルエンザワクチンを打ちましょう

今年も10月から,インフルエンザワクチン接種が始まります。重症化予防のためにも,ワクチンを受けることをお勧めします。

 

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